第二章
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「その裏ではな」
「自分のことしか考えていなかった」
「碌でもないことばかりな」
それこそというのだ。
「考えていた、その碌でもない考えを読みたいか」
「醜いでしょうね」
梨衣もその話を聞いて言った。
「絶対に」
「そうだな、人間には悪意がある」
佳織はこうも言った。
「もう悪意はな」
「それはですね」
「これ以上醜いものはない」
「この世で」
「時としてそれは言葉や顔に出るが」
「心ではですね」
「出さなくても思うことは誰でもあることだ」
心の中に悪意を持つことはというのだ。
「その悪意を読むことになるのだ」
「人の心が読める様になると」
「そうなるのだ、君はそれを読みたいか」
「いえ」
即座にだ、梨衣は真顔で答えた。
「そう言われますと」
「嫌だな」
「私だって悪意持つことはあります」
真顔のまま言った。
「憎いとか怨むとか妬むとか」
「私もだ、思うこと自体がよくないが」
「どうしてもですね」
「人にはそうした感情があるのだ、例えば目の前にいる少年が今の君を見てだ」
半ズボン姿の梨衣をというのだ。
「後で君を創造してだ」
「あれをしたいとかですか」
「思っているのを読みたいか」
「気持ち悪いですね、いや男の人って」
「やはりそうしたことをする」
「そうですよね」
「だがそんなことを読むことはな」
心を読んでというのだ。
「君が今言った通りだ」
「気持ち悪いですね」
「私もそんな感情は読みたくない」
「絶対に」
「脳内で自分が滅茶苦茶にされている場面を知りたい女がいるとはな」
佳織も真顔だった、それで首を傾げさせて言うのだった。
「そうは思えないな」
「そうですね」
「だからな」
「人の心が読めると」
「嫌なものだ、最悪の醜悪を見かねないのだからな」
人の悪意、それをというのだ。
「これはないからいい、若しそんな力があれば」
「物凄く大変ですね」
「そうだ、現にだ」
「現に?」
「藤子不二雄先生の漫画でそんな話があった」
佳織はこの巨匠の作品のことを話した。
「短編でな、人の心が読める様になってな」
「そうしたものをですか」
「それで大変なことになった」
「そうなんですね」
「そしてだ」
そのうえでというのだ。
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