β天国
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ったため寂しい想いでいっぱいだった。特にヴァッサボーネは意識を失っていた時に助けに来てくれたのに、俺自身が彼のことを消してしまったのだから。
「ふふっ、初めてお母さんらしいことができたわね」
「いや、それはごめんて」
そんな俺を優しい瞳で見ながら頭を撫でてくれるお母さん。そんな彼女にヴァッサボーネは申し訳なさそうな表情をしていたが。
「あれ?」
そこで俺はあることに気が付き、お母さんから離れる。そんな俺にキョトンとした表情を見せるお母さんだけど、これは非常に大切なことなので確認しなければならない。
「二人ってそういえば死んだよね?」
「うん、そうね」
「つまり・・・」
今目の前にいる二人は命を落としている。そんな人と同じ空間にいる理由は一つしかない。
「俺・・・死んじゃったの?」
あの幽霊からの攻撃を受けた後の記憶がない。もしかしたらあれが致命的な一撃になってしまっていて、俺は命を落としてここにいるということなのか?
「ううん。まだ死んでないみたいよ」
「まだ?」
「うん。かなり死に近い状況みたいだけど、ギリギリ死んでない・・・みたいな?」
お母さんは笑顔で答えてくれるけど、とてもそんな表情で答えていいような内容なじゃない気もする。
「まぁ、分かりやすくいうとここは天国でも地獄でもないんだ、シリル」
「??ヴァッサボーネは地獄行きでしょ?」
「よし、後で本気で引っ叩いてやる、この姿で」
少し冗談を言ったら怒り心頭の様子で俺を見下ろしてきたヴァッサボーネを見てお母さんの後ろに隠れる。お母さんの顔は見えなかったけど、ヴァッサボーネの顔が青ざめていたのを見るとなんか追求してはいけない気がしたのでここはスルーすることにした。
「今あなたと話している私たちは本物の私たちではないってことよ、シリル」
「??ますます意味がわからないだけど」
二人が何を言いたいのかわからず、うんうんと頭を揺らして思考する。それでも答えは出ずにいる俺を見て、二人は優しく教えてくれた。
「ここは死語の世界でもなければあの世でもない・・・シリル、お前が作り出した精神的天国・・・"β天国"とでも言っておこうか」
「何?それ」
「お前の無意識下に眠っている天国のイメージだよ。だからこの"β天国"は人の数だけ存在する。実際の俺たちの魂はこことは違うところにあるんだ」
「無意識下の天国・・・」
そう言われてみると、俺が考える天国と類似しているかもしれない。遠くに見える人たちは幸せそうで、何不自由なく暮らしているように見えるし、何よりこの空間が非常に心地よい。ただ、それは二人がいるからというのもあるんだろうけど。
「シリルは優しい子だから、きっとあなたの記憶にいる人はみんなここにいる
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