暁 〜小説投稿サイト〜
ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第87話 アトラハシーズ星系会戦 その3
[2/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
〇〇〇隻。指揮官はローラント=アイヒス=フォン=バウムガルテン中将。本日〇八〇〇時に先の任務部隊の現れた跳躍宙域に到着予定とのことです」

 これは予想外の戦力だ。確かにイゼルローンの駐留戦力を誘引し、もってダゴン星域カプチェランカ星系の攻略に寄与するのは戦略的目標の一つではあるが、我々がエル=ファシル星系より出動するよりも早くにイゼルローンを出港しない限り、アトラハシーズ星系に到着することは出来ない。

「……捕虜が我々を混乱させるために苦し紛れの空想を出した可能性はどうだ?」
「異種艦艇の、それも複数の佐官クラスが同じ証言をしております。捕虜間での示し合わせという可能性は極めて微小。事前に敵司令部が、士気向上の為にバラまいた偽情報ということも考えられますが」
「先の戦いで、敵中核部隊の戦闘行動は明らかに増援を前提とした戦いじゃった。イゼルローンからの増援の可否はともかく、そのような情報を敵司令部が正式に部下に流したことは確かじゃな」

 捕虜にとられることを前提に偽情報を部下に植え込むというのはなかなかできることではない。もし増援が来なかった場合、司令部に対する将兵の信頼を低下させることになる。リューゲン星系でのウランフのように、戦局によっては自分自身でも信じていないようなことを部下に信じ込ませなければならないが、今回は援軍が事実であると見ていい。

「申し訳ない。これほどまでとは」

 アスターテ星域防衛勢力の推定ミス、イゼルローンからの増援の動き。いずれにしても情報部の事前調査とは異なる点が多い。状況的にはどう考えてもモンティージャ中佐の責任ではない。しかし幾らジャムシード星域に諜報員がいたとしても、まるで第四四高速機動集団をアトラハシーズ星系で『袋の鼠にする』ような戦力配置をされたことにモンティージャ中佐は謝罪した。

「儂は情報部を神様とは思っておらんから、謝罪せんでよい。第八艦隊や統合作戦本部の情報部もそうそうバカではない……まぁ質の悪い偶然ということにしておこう」
 爺様は司令席で少し伸びた無精髭を撫でながら、ボヤくようにそれに応えた。
「問題はどうやってダゴンに向かうかじゃ。このままの進路で進むとなれば、跳躍宙域で挟撃に遭う可能性があるじゃろう」
「ダゴンに向かわれますか?」
 モンシャルマン参謀長の口調は質問というよりは確認といったものだった。爺様とは長年の付き合いだから、爺様の腹はある程度読めているという事か。爺様はそれに無言の頷きで答える。
「で、カステル。どうじゃ?」
「先の戦いで艦隊のエネルギーとデコイに多くの消耗が出ております。ダゴン星域カプチェランカ星系に向かう当初想定ルートを進む場合、可能交戦時間はまず一二時間と見ていただきたい」
「星間物質の取り込みも計算の上かね?」
「はい。恒
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ