第二章
[8]前話
「あります」
「そうなんですね」
「はい、この子を見て下さい」
ここでスタッフは自分達の前にいる一羽のハクトウワシを手で指し示した、見れば自分の巣で蹲っている。
「クァ」
「マーフィー、雄でして」
「動かないですね」
「実は持って来た石を温めていまして」
「卵でなくてしかも雄が」
「はい、ハクトウワシはつがいで行動しますが」
それでもというのだ。
「彼は独身でしかもハクトウワシの子育ては雌が温めて雄は縄張りを守ったり餌を獲りますが」
「彼はこうして」
「温めています、食事等は最低限で」
「しかも石を」
「そうなんです」
「これはまた不思議ですね」
「鳥類を専門に研究している生物学者の人のお話を聞きますと」
スタッフはこう前置きして話した。
「この子は前のつがいが子供を産まなくてまた右目が見えなくて」
「右目がですか」
「それでここに保護されましたし」
片目が見えなくてというのだ。
「これでは野生で生きていけないと判断されて」
「それで、ですか」
「はい、それで」
その為にというのだ。
「この施設にいますが暫くです」
「こうしていますか」
「そうなんです、ハクトウワシも時にはです」
マーティンソンにあらためて話した。
「人から見て不思議な行動を取ります」
「そうなんですね」
「ハクトウワシだけでなく他の生きものもそうですし」
「生きものは時として不思議な行動を取る」
「そのことを覚えて頂くと有り難いです」
「わかりました」
マーティンソンはスタッフの言葉に頷いた、そのうえでマーフィーを見るとずっと動かない。そのうえで温め続けていた。
彼は旅行を終えてミネソタ州に帰るとこの話も人々にした、そうしてハクトウワシひいては生きものは時として不思議な行動を取るのだと言うのだった。
ハクトウワシの行動 完
2023・4・19
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