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自由に嗤われる
本文
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[9] 最初
なぜ私は「自由」だと認識したのだろう……。

「お前が私を『自由』だと認識した理由は簡単だ。表面上は、現状を打破するための救いだと思ったとしても、本質的には呪いの類であることを理解しているからだ」

呪い。
そのように言われて、「自由」に言われてきたことが初めてわかった気がする。
私は今まで、「自由であれたら、苦しまずに楽なのに」と思ってきた。
だが、本当は気づいていたのだろう。
何よりもそれが尚、私を苦しめていたことに。

そうわかっていながら、私は気づかないフリをした。
なぜなら、怖かったから。
自分が救いを求めたものさえ、その実態は救いではなく、
呪いだと知ることが……。

「やっと、受け入れたようだな。そうだ。私は一種の呪いだ。ある人間は「私」を求める。だが、私はその人間を救うことはない。いや、救うどころか、その人間の呪いとなる。呪いを解くためには、それが呪いであることを認識する必要がある。そうでなければ、ずっと、私に縛られることになる。そんな性質である私だからこそ、このような見た目なのだ」

「自由」はそのように自分のことを語った。私は「なるほど」と腑に落ちた。
だが、まだ一つ疑問が残っている。

「なぜ、私の前に現れたのです?」

すると、「自由」は再び大通りの方を見た。

「あの人混みの中には、様々な人間がいる。そもそも、私のことを気にしていない人間。私の存在は意識しているが、それが呪いだとわかっている人間。君のように目を逸らす人間。そして、全く私のことを理解せずに、私に救いを求める人間……」

彼は視線を大通りに向けたまま、目を細める。
それらの人々に対して、どのように思っているのだろうか?

「気にも留めていない人物は私に気づかない。私のことを理解していない人々も、私に気づかない。私に気づいている人間は、私に近づこうとしない。君のような人間だけなのさ、私に近づくのは……」

そのように言ったきり、「自由」は口を開かない。
どうしたのだろう?

「もう、会うことはあるまい。いや、会ったとしても、君は、私に近づかない。私はそういうものだからね……」

そのように言われて少しの時間が経つと、私は「自由」が去ったことに気づいた。
そのくらい私にとって、彼のことがどうでもよくなっていた。

おわり

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