第三話
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よ。前々から話してたと思うんだけど……」
固まったまま動かないオリオトライ先生を置いておいて、トーリは俺達の前に立つと、一息吸って言った。
「明日俺、コクろうと思うわ」
『…………………………』
トーリの言葉に全員が動きを止める。沈黙に耐えかねた弓を持った巫女の浅間智が「え、ええと……これ笑うところ……ですかね?」と言うが、トーリを表情を変えない。
……本気、てことか。
「フフフ愚弟。いきなり出てきてコクり予告とは、エロゲを持ってきて燃やされる人間の台詞じゃないわね!」
そんなことを考えてるとトーリの姉の葵喜美が相変わらずのハイテンションで話しかける。
「それで愚弟にコクられる哀れな犠牲者は誰? 賢姉にゲロしてみなさい、さあ!」
「……ホライゾンだよ」
………………………………………………っ!
俺を初めとする梅組全員が絶句した。
ホライゾン。
その名前は知っている。ホライゾンはトーリの幼馴染みで、トーリが彼女のことが好きだったことも知っている。だけど、彼女は……。
「……馬鹿ね。あの子は十年前に亡くなったのに。アンタの嫌いな後悔通りで。……墓碑だって父さん達が作ったじゃない」
そう。喜美の言う通りだ。ホライゾンは十年前に死んだのだ。
「……分かってるよ。ただその事からもう逃げねぇって決めたんだ」
皆がトーリを辛そうに見るが、トーリだけは相変わらず笑って言う。
「明日で十年目なんだ。ホライゾンがいなくなってから。だから明日、コクってくる」
トーリが笑いながら言う。迷いのない、どこか吹っ切れた笑みで。
それを見て梅組の皆が表情を柔らかくして笑みを浮かべる。俺とキャスターも笑っていた。その中で一番嬉しそうな雰囲気を纏っていたのが喜美だった。
「……そう。それじゃあ今夜は告白前夜祭といったところかしらね?」
喜美の言葉にトーリが笑って頷く。……と、ここで今まで固まっていたオリオトライ先生がゆらりとした足取りでトーリに近づいていく。
「って先生聞いていたかよ? 今の俺の恥ずかしい話!」
「…………知ってる? 人間って怒りが頂点に達すると周りの音が聞こえなくなるのよね……」
オリオトライ先生が底冷えのする声音が漏れる。あー、これはかなり怒っているな。でもトーリはそれに気づくことなく……
「おいおい、仕方ねえな! じゃあもう一回だけ言うぞ? 俺……今日が終わって無事明日になったらコクりに行く……ぶっ」
「よっしゃ! 死亡フラグゲットォーッ!」
ドゴォ!
言った次の瞬間、トーリはオリオトライ先生に蹴り飛ばされてヤクザ事務所に突っ込んでいった。
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