水神竜の憂鬱
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彼の後ろからメガネをかけた女性が歩いてくる。その目はかなり高圧的なものに感じたが、それは明らかに俺たちへと向けられていた。
「彼女はカラミール。色々と私の世話をしてくれている。紹介しよう、イシュガルからやってきた魔導士たちだ」
明らかに怒っている彼女の問いに答えずマイペースな水神竜さん。話を振られた俺たちは慌てて返答する。
「ど・・・ども」
「俺たちは魔導士ギルド妖精の尻尾のーーー」
「結構。どうせエレフセリアの差し金でしょう?」
「まぁ、そうなるかな」
メガネをクイッと動かしながらこちらを睨んでいる彼女のタジタジの俺たち。水神竜さんが友好的なだけにますます彼女の圧力が目立ってしまう。
「どうぞ、水神竜様に挑むつもりなら今すぐにでも。あなたたちが敵う相手ではありませんから」
「まぁ待ってくれ、カラミール」
水神竜さんを相当敬っているのが見てとれる彼女の発言。しかしそれを彼は遮る。
「彼らとは"会話"ができそうなんだ。少し話をさせてくれないか?」
「・・・どうぞ」
「席を外してほしいってことなんだ」
どうやら彼女の圧力にタジタジなのは俺たちだけではなかったらしい。水神竜さんも強気な彼女に押されているような印象を受けたものの、彼女は彼の言葉は絶対なのか、踵を返しこの場から立ち去ろうとする。
「ふん。ちゃんとそいつらの始末しといてくださいね」
「「「「「始末・・・」」」」」
そう言い捨ててこの場からいなくなるカラミールさん。彼女がいなくなったのを確認してから、水神竜さんが口を開く。
「いやぁ、彼女は人間の娘なんだけどね。海で遭難してるところを助けたのがきっかけで住み着かれてしまってね。悪い子じゃないんだ」
乾いた笑いを見せる水神竜さんに俺たちは呆然としている。まるで自身の子供のように彼女のことを話す彼は、悪い人には見えなかったからだ。
その後彼は神殿内を案内してくれる。農園や医療施設、さらには以前のカラミールさんのような遭難者を助けるための監視塔もここは兼ねていることを聞き、俺たちは感涙してしまった。
「あんた本当に水神竜メルクフォビアなの!?」
「いい人過ぎる!!」
「街の人たちのことを考えて・・・」
「竜が遭難者助けるとか泣けてくるわ!!」
「感動した!!」
「そ・・・そこまでですか?」
俺たちの感動している姿にウェンディは付いて来れてないようで少し引いたように見ていた。でもまさかこの人がこんなにも人のために行動しているとは思っておらず、驚きもあったことからここまでの反応になってしまったのは言うまでもない。
「でも厄災なんてウソじゃないか」
「こんなにみんなのことを思ってるんだもんね〜」
「そうね、全く害は無さそう」
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