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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
成り行きであたしは、感動の再会の手伝いをする
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北斎もまた、絞り出すようにか細い声でそう呟いた。
「そうだよ…僕だよ…っ!舞だよ!!」
その途端、マキさんの目から溢れるのは大量の涙。
2人は走り出し、そのままぶつかり合うようにして抱きしめあった。
「お栄ちゃん!!お栄ちゃんなんだよね!?僕の…お栄ちゃんなんだよね!?」
「ああそうだ。他の何者でもねぇ。マイのお栄ちゃんだ…!」
マキさんはわんわん泣いており、北斎はこちらからだと後ろ姿しか見えないため表情が伺えないが、涙ぐんだ声をしているので泣いているのは確かだ。
「葵様…これは…?」
「まぁ気付こうと思えば気付けたよね。特徴が一致する時点でさ。」
とまぁ、なんとマキさんの正体こそ葛飾北斎が探していた自分のマスター、葛城舞だったのだ。
まぁでも探偵さんが特徴がほぼ一致するとか言っていた時点で気付くべきだったんだろう。
知らず知らずのうち、成り行きで感動の再会の手伝いをしてしまったあたし達。
「え…えっ?えっ?」
なにがなんだかわからない、おそらくこのお店の店主であろうモリアーティはそんな二人を見てずっと戸惑っている。
まぁいくら天才の彼でも無理もない。
いきなり押し入って来た不審者がこのお店の看板娘と謎の感動の再会を果たしているのだから。
「紫式部。」
「…ええ、そうですね。」
ともかく、ここだとあたしは部外者だ。
2人が再会を分かち合い、落ち着くまではBARの外で待つことにする。
目配せをするだけでどうしたいか分かってくれた香子と共に、あたし達は何も言わずこっそりと外へ出た。
「まぁ、良かったね。」
「そうですね。」
なんの手がかりもなく、日本全国を探し回ろうとしていた北斎。
財団の追っ手から逃れながらも彼女は諦めず、こうしてここまで辿り着けた。
あの仲の良さだ。マイさんだってそうだろう。
彼女もきっと、自分の葛飾北斎を探し続けていたハズ。
「日本全国。なんのヒントもなしにお互いを探し続けた嘘みたいでホントの話。」
「何か書けそうですね。」
「かもね。とびきり長いの、書けそうかも。」
そんなことを話し合いながら、あたしは2人が落ち着くまで待ち続けた。
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