第128話『コスプレ』
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なお嬢様の世話焼きをするのが執事の役目なのだから、執事というのは大変だと思う。
「あ〜もう──」
でも、この美少年執事はそれくらいで挫けたりはしない。
その端正な顔をお嬢様の顔にぐいっと近づけ、透き通った蒼い瞳で真っ直ぐ見つめると一言、
「この口塞いだら静かになる?」
「は、はひ……」
いつもより声色を少しだけ低くして、その辺の男子よりも男らしく振る舞う結月に、晴登は乙女の如く心臓が高鳴ってしまう。
「お、シャッターチャンス」
力が抜けて抵抗できなくなった晴登を見て、莉奈はついにシャッターを切った。
後から入って来た男子達は、その様子に憐れむような視線を向けるのだった。
*
クラス中で一頻り写真を撮ったりからかいあったりした後、その格好のまま文化祭の準備に戻る。異様な光景ではあるが、さすがにもう慣れてきた。
「傑作だったな晴登!」
「やめろ! 恥ずかしすぎてもうお婿に行けない……」
「じゃあもうお前が嫁でいいんじゃねぇか?」
「それは名案!……な訳あるか」
壁を背に座り込んで休んでいる晴登に声を掛けてきたのは、メイドの格好なのに全然恭しくない大地だ。むしろ、結月との写真を撮っている時、彼が横目にケラケラ笑っていたのを晴登は知っている。こんなメイドはクビだクビ。
「にしても、本当に完成度高いなこれ」
「元々の素材が良かったし、さらにファッション部の奴らが本気出したらしいからな」
晴登は自分のスカートを触りながら、そのクオリティの高さに驚きを隠せない。コスプレ用の衣装ってこんなに立派なものなのか。てっきり手作りだからもっと安っぽい見た目になると思っていた。莉奈のママの友達とファッション部とやらに感謝しないと。……って、
「え、何その部活。初めて聞いたんだけど」
「文字通り、ファッションを研究する部活だ。あと言っておくが、お前の部活の方がマイナーだぞ」
「あはは……」
これには何も言い返せない。
ファッション部なんて聞いたことはないが、活動内容が予測できるだけまだマシだろう。それに比べて魔術部って何だ。頭のおかしい奴らだと思われても仕方ないと思う。
「そういや聞いたぞ。2組の転入生の天野さん、魔術部に入ったんだって? 一体どんな手使ったんだよ、魔術部部長さん?」
「その呼び方やめてくれ。……理由は大したことないぞ。たまたまあの人の趣味がマジックだっただけだよ」
「え、あの子マジックやんの? 意外だな」
とはいえ、魔術部の表向きはいわゆるマジック部。マジックをやる人が入部するのは、ごく自然な流れと言えよう。晴登たちもそういった理由で通している
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