七十 生者の骸
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「───そうだな。恩を売っておけ。操り人形にされたくなければ、な」
噎せ返るような茹だる空気が満ち満ちた緑の巣窟。
ジャングルの奥地にひっそりと佇む廃墟はかつて世界征服を企む神農という王の砦だった。
今や神農に取って代わって、この廃墟の主となった存在は、特に何の思い入れもなく、あっさりこの砦を手放す口約束をしたかと思うと、人知れず誰かと連絡を取り合っている。
その誰かが非常に気になったが、白と君麻呂はおとなしく傍で控えていた。
【暁】から引き抜いた三人との交渉の場であった翡翠の広間。
其処から出るや否や、天井でサソリ達を警戒して見張っていた二人が、入れ違いのようにナルトの両隣にさっと降り立つ。
振り返ることもなく、彼らに気づいていたナルトは、そのまま歩みを止めず、【念華微笑の術】で念話をしながら廊下を進んだ。
敬意を持って、敬愛する存在へ寄り添うかのように、競って傍へ赴く。
音も気配もなく静かに、一歩後ろを歩く二人。
王に付き従う従者のような、或いは騎士の如き所作で一歩後ろを歩いていた白と君麻呂は、【念華微笑の術】で姿なき相手との話を終えたのを見計らって、同時に訊ねた。
「「……よろしかったのですか?」」
一字一句違わずに同じ言葉を口にした両者は、お互いに睨み合うと、ふんっとすぐさま顔をそむける。
そっぽを向き合う同族嫌悪のふたりに苦笑したナルトの反応を見て、こほん、と咳払いをした白は気を取り直して一歩前へ踏み出た。
しかしその言葉はなかなか過激なものだった。
「今からでも氷漬けに…」と主張する白の隣で、君麻呂も「ご命令あれば、すぐにでも骨を粉々に…」とナルトの顔色を窺う。
翡翠の間に集結していた『暁』の飛段・角都・サソリ・デイダラを秘かに見張り、控えていた白と君麻呂はいつでも飛び出す準備をしていた。
なんせ相手はあの悪評高い『暁』。彼らが集まる翡翠の間ごと凍らせて氷室にする意思も、骨の雨で広間ごと串刺しにする意志もあった。
敬愛するナルトに害を為すならば。
或いは、ナルトからの指示があれば。
しかしながら、そんな命令は白と君麻呂には下されなかった。
それどころか、このジャングルの奥地にある廃墟を好きに使え、と『暁』の四人に、ナルトはあっさり砦を明け渡した。
角都・デイダラ・サソリに交渉を持ち込んでいた矢先に割り込んできた飛段から、ひとまず話は終わったとばかりに翡翠の間を後にする。
途端、即座に駆け寄った白と君麻呂の言い分を耳にして、ナルトは苦く笑った。
「捨て置け。何か問題あれば…」
瞬間、ゾクリ…と白と君麻呂は背筋を這い上がるモノを感じた。
寸前とは一転して一切の温度を感じさせぬ冷やかな声音で告げたナルトに気圧さ
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