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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十一話 現実は予測を上回る
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ンスキーによればフェザーンから地球に人を運ぶ仕事はフェザーン商人にとって最も堅実な仕事だそうだ。行きも帰りも人を運ぶ、それだけで金が入る……。地球はフェザーンを利用して帝国、同盟に勢力を植え付け、浸食してきたのだよ」
政敵をやりこめた得意げな口調では無い、むしろ不快そうな口調だ。それだけに事態は深刻だと皆が感じただろう。

「しかし、何のためにサイオキシン麻薬を与えるのだ? 狂信者を造り出す事に何の意味が有る?」
サンフォード議長がトリューニヒトに問いかけた。想像力の欠片もない男だ、よく議長が務まる。トリューニヒトが微妙に片眉を上げた、多分呆れているのだろう。溜息が出た。

「混乱させるためです。殺人、爆破、テロにより社会を混乱させる。それにより現実に失望させ宗教に縋りつかせる……、宗教が力を得るには社会が混乱している方が望ましい。そのために狂信者が要る……。そうじゃないかね、国防委員長」
私の言葉にトリューニヒトが無言で頷いた。彼方此方で呻き声が起きた。おそらく皆が恐怖に囚われているだろう。

「だがこうして地球教の陰謀が明らかになった今、彼らの計画は潰えた、そう見ていいのではないか」
ガイ・マクワイヤー天然資源委員長が周囲を窺いながら発言した。少しでも事態を楽観視したいのだろう。ここにも想像力が欠片もない人間が居た。最高評議会の十一人の中に二人だ、最近では想像力は必要とされないらしい。

「確かに彼らの計画は潰えた。しかし危険性は少しも減らない。今後彼らは生き残りのためにテロを仕掛けてくる可能性が有る。標的は政府、軍部の頂点に居る人間達だ」
トリューニヒトの言葉に皆がギョッとした表情を見せた。

「我々が標的になるというのかね」
「その通りです、議長。先ず狙われるのは貴方と私、そしてボローン法秩序委員長ですな。理由はお分かりでしょう」
議長が顔を強張らせている。想像力だけじゃない、胆力もないらしい。また溜息が出そうになって慌てて堪えた……。

「評議会のメンバーに護衛を付ける必要が有るな、それと警備をこれまで以上に厳重にする必要が有る。こいつは警察の仕事だが、さてどうする。ボローン委員長、対地球教対策として軍に任せるかね」
ホアンの言葉にボローンの顔が引き攣った。

軍に任せれば警察の面目は丸潰れ、警察が担当すれば万一の場合は責任問題。二者択一、究極の選択だろう。緊張のあまり目が飛び出しそうになっている。
「……軍は必要ない、警備は警察が行う」
絞り出す様な声だった。周囲を睨むように見ている。

「宜しく頼むよ、ボローン委員長。こちらも出来る限りの協力はする」
「分かった」
トリューニヒトの言葉にムッとした口調でボローンが答えた。
「それと私の警備は軍の方で行うから無用だ。警察を信用していないので
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