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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十一話 現実は予測を上回る
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う私語が聞こえた。
「間違いではありません。同盟でも帝国でも地球教団支部はサイオキシン麻薬を使用していました。地球教そのものが何らかの目的のためにサイオキシン麻薬を使用していたという事でしょう。しかも生存者の中毒症状から推測するとかなり以前から使用していたようです」
トリューニヒトの沈痛と言ってよい口調に皆が沈黙した。しかし未だ信じられないといった表情をしている。無理もないだろう、宗教団体がサイオキシン麻薬を使用していたなどあり得ない事だ。あれは人を破壊する毒薬だ、まともな人間、組織なら使うはずは無い。
「連中は一体何処からサイオキシン麻薬を入手したのだ? あの騒ぎ以来、サイオキシン麻薬については厳しく取り締まりを行っている。サイオキシン麻薬が流通しているなどという話は聞いた事が無い」
法秩序委員長、ライアン・ボローンが首を横に振っている。
警察を配下に置いている彼にとって例のサイオキシン麻薬、スパイ事件は思い出したくもない悪夢のはずだ。しかしそれ以上に今現在サイオキシン麻薬が流通しているという事が信じられずにいる。私もトリューニヒトから聞いた時には信じられなかったから分かる。しかし現実は常に予測を上回る、悪い現実ほどそうだ。そしてその現実を的確に予測する人間も居る、ヴァレンシュタイン……。
「地球だよ、法秩序委員長。彼らは地球でサイオキシン麻薬を製造しているのだ。ルビンスキーから聞き出したから間違いは無い」
彼方此方で呻き声が上がり部屋の空気が一気に重くなった。サンフォード議長の顔が蒼白になっている。事無かれ主義のこの男には刺激が強すぎるか……。やはりこの男では和平は無理だ。ホアンを見た、微かに首を横に振っている。どうやら同じ事を考えたらしい。
「彼らは地球に信者を送り込みそこでサイオキシン麻薬を与え洗脳した。自分達の意のままに動く狂信者を作りだしたのだ」
トリューニヒトの言葉が続く。事実を告げただけだが冷酷と言って良い程の威力だ。皆、凍りついている。
「馬鹿な! そんな事は有り得ない!」
「分かっている。同盟から帝国領に在る地球になど行けるはずがない、そう言いたいのだろう、ターレル副議長」
「その通りだ! 君はルビンスキーに騙されているのだ!」
副議長兼国務委員長、ジョージ・ターレルは噛み付かんばかりの勢いでトリューニヒトを責めた。愚かな、この時点でルビンスキーがトリューニヒトを騙す理由が何処にある。今のルビンスキーは同盟政府が見捨てればあっという間に地球教徒に殺されるだろう、裏切り者として……。
「同盟から地球に行くにはフェザーンを経由するしかない。そしてフェザーンと地球は裏で繋がっている。それでも不可能だと?」
「それは……」
ターレルが絶句した。俯いて黙り込んでいる。
「ルビ
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