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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十一話 現実は予測を上回る
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私の感情は分かっただろう、しかし何の反応も見せなかった、私の反発など彼にとってはどうでも良い事なのかもしれない。
『君はミューゼル中将の死を望んでいるのだと思っていたが』
「!」
「そうですね、望んでいます。死んでくれればと思っていますよ」
困惑した様なシトレ元帥の問いかけと何の感情も見えないヴァレンシュタインの答え……。混乱した、訳も分からずスクリーンとヴァレンシュタインを見た。
『では何故警告するのかね』
「さあ、良く分かりません。何でかな……。多分、馬鹿なんでしょう……、感傷を切り捨てられない。……愚劣にも程が有るな、いつか自分を殺すかもしれない人間に忠告するなど……。自分がエーリッヒ・ヴァレンシュタインとして此処で生きているという事を未だに理解できずにいる……」
トリューニヒト委員長、シトレ元帥、私……。皆が困惑する中ヴァレンシュタインだけが無表情にココアを飲んでいる。心此処に在らず、そんな風情だ。先程まで彼に感じた反発は消えていた。この男をどう捉えれば良いのか、まるで分からない……。
『ヴァレンシュタイン中将……』
トリューニヒト委員長が躊躇いがちに声をかけた。しかしそれを遮るようにヴァレンシュタインが話しだした。多分故意にだろう、何か言われるのを嫌ったのかもしれない。
「ミューゼル中将だけじゃありません。テロを効率よく行うには組織の頂点を狙うのがベストです。帝国も同盟も政府、軍の上層部は非常に危険な状況にある。身辺警護が必要です」
『なるほど、私達も要注意か。しかし一番危険なのはヴァレンシュタイン中将、君だろう』
シトレ元帥の言葉にヴァレンシュタインが僅かに首を傾げた。
「私ですか? 非正規の艦隊司令官を殺しても余り意味は無いでしょう」
『報復という意味が有るだろう。それに君を一個艦隊の司令官にすぎないとは誰も思っていないよ』
『シトレ元帥の言う通りだ。君に死なれては困る』
スクリーンの二人がヴァレンシュタインの身を気遣っている。二人とも深刻な表情をしているのを見れば口だけでは無い事が分かる。やはりこの三人は密接に繋がっていると見て良い。そして核になるのはヴァレンシュタインだろう。彼が何を考えているのか、それが帝国の未来に大きく影響するのは間違いない、早急に確認しなければ……。そしてミューゼル中将との関わり、こちらも確認する必要が有るだろう……。
宇宙暦 795年 9月18日 ハイネセン 最高評議会ビル ジョアン・レベロ
「馬鹿な、何かの間違いではないのかね、国防委員長」
最高評議会議長、ロイヤル・サンフォードの声は疑念と猜疑に満ちていた。そして他のメンバーも信じられないといった表情でざわめいている。彼方此方で”有り得ない“、”冗談だろう“とい
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