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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十一話 現実は予測を上回る
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同盟から帝国に行こうとすればフェザーンを使うしかありません。そして地球とフェザーンは裏で繋がっています。どうして不可能なのです?」
スクリーンから唸り声が聞こえた。いや、自分も唸り声を上げている。そしてヴァレンシュタインはそんな私達を面白そうに見ていた。

「フェザーン起点の地球巡礼がどのような形で行われているか知っていますか? 客船じゃありません、貨物船を使うんです。つまり法的には人間を運ぶのではなく貨物を運ぶ。何処の誰なんて事は関係ありません。皆帝国人を運んでいる、或いはフェザーン人を運んでいると思っているでしょうがその中に同盟人が居てもおかしくは無い、違いますか?」

『何という事だ……』
トリューニヒト委員長が疲れた様に呟きシトレ元帥がブツブツと何か呟きながら首を横に振っている。
「まあ、今のは私の推測です。あとでルビンスキーに確認してみましょう。それで真実が分かるはずです」

そうか、ルビンスキーか、先にそちらに確認すれば良かったか……。どうしてもルビンスキーと地球、フェザーンと地球が結びつかない……。
『そうだな、そうしてくれるか……。レムシャイド伯、帝国は地球に対して武力討伐を実施すると聞いていますが』

「そう聞いております、トリューニヒト委員長」
『決して逃がさぬように願いますぞ。彼らは非常に危険です、逃亡を許してはとんでもない事になる』
「分かりました。本国に改めて念押ししましょう」

「討伐軍の指揮官は誰です? ミューゼル中将ですか?」
「いや、指揮官の名前までは聞いておらぬが……」
ヴァレンシュタインの問いかけにトリューニヒト委員長、シトレ元帥が表情を変えた。ヴァレンシュタインは表情を消している。はて、ミューゼル中将に関心が有るのか?

「気を付ける事です」
「?」
「地球教の軍事力は無きに等しい。そんな彼らが取る手段はテロしかありません。殺人、爆破……、幸い彼らには死ぬ事を恐れない狂信者がいます。戦う事に熱中していると後ろから刺されますよ」

テロの言葉にトリューニヒト委員長、シトレ元帥が顔を顰めた。当然ではある、政府、軍の中枢にある彼らにしてみればテロなどおぞましい代物以外の何物でもあるまい。私だとて彼の言葉に嫌悪感しか感じられない。もしテロが実際に行われれば地球教の連中に対して憎悪を抱くだろう。

「ミューゼル提督を殺す事で討伐軍を混乱、いや麻痺させようというのだな」
「その通りです。彼に警告する事ですね、一つ貸しだと言っておいてください、必ず返せとね」
ヴァレンシュタインがクスッと笑った。その事に神経が苛立った、妙に反発したくなった。

「……卿の言う事が当たるかどうか、分かるまい」
子供じみた反発だ、馬鹿げている。しかし押さえられなかった……。ヴァレンシュタインも
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