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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十一話 現実は予測を上回る
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ン麻薬を作ったと言うのかね?』
「そうじゃ有りません。アルレスハイム星域の会戦の前からですよ、トリューニヒト委員長。宗教団体がサイオキシン麻薬を犯罪組織から買えば何かと利用される。或いは噂が流れ警察に目を付けられる、そのくらいなら自分達で製造した方が良い、そう思ったのでしょう」
ヴァレンシュタインは苦笑している。
「馬鹿な、そんな事は……。帝国内での捜査は非常に厳しいものだったと聞いている。それをすり抜けたと卿は言うのか」
チラリとヴァレンシュタインが私を見た。未だ苦笑を浮かべている。そしてココアをもう一口飲むとカップをテーブルに戻した。顔から笑みが消えた。
「地球教が何のためにサイオキシン麻薬を所持していたと思います?」
「……」
『……』
トリューニヒト委員長、シトレ元帥、私、三人が無言で視線を交わし、そしてヴァレンシュタインを見た。
『教徒に与えていた……。市民を地球教徒にするために与えていた、そんなところか』
シトレ本部長の言葉にヴァレンシュタインが頷いた。
「最初にサイオキシン麻薬を与えたのは地球で、でしょうね」
「地球?」
「聖地巡礼、聞いたことは有りませんか? 一般市民、或いは地球教徒が地球へ巡礼にいく……」
聞いたことは有る。フェザーンからかなりの巡礼団が地球に行っている。随分と地球教が信徒を増やしていると思った事も有る……。
『そこでサイオキシン麻薬を投与したと君は言うのかね?』
「そうだと思いますよ、シトレ元帥。サイオキシン麻薬中毒者にした上で洗脳する。筋金入りの地球教徒の完成ですね。教団の命令なら何でもするでしょう、人殺しでもね」
蔑むような口調だった。顔に冷笑を浮かべている。話の内容よりもその口調と冷笑に息を呑んだ。
「巡礼者全てに与えたわけではないでしょう。多分、家族が無いものとか周囲に不審を抱かれることの少ない人間を選んだはずです」
『だから帝国でも同盟でも気付かれなかった、そう言うのかね、君は』
トリューニヒト委員長が微かに首を傾げている。それだけで国家の目を眩ませたのか、そう言いたげな表情だ。私も同感だ、それだけですり抜けられるとは到底思えない。
「彼らはサイオキシン麻薬を利益を得るために作ったんじゃないんです。売人も必要なければサイオキシン麻薬の使用者を探す必要もなかった。取引が無い以上、人も動かなければ金も動かない。どうやって見つけるんです?」
『……』
「……」
『君の言う通りなら地球教は地球で教徒をサイオキシン麻薬中毒者にしたことになる。帝国人なら分かる、しかし同盟人には不可能だろう』
トリューニヒト委員長の言うとおりだ。地球は帝国内にある、同盟人を麻薬中毒者にする事は不可能だ。だがヴァレンシュタインはクスクスと笑い出した。
「
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