第二章
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「一度焼け野原になってな」
「横浜もか」
「東京みたいにな、それから復興してな」
そうしてというのだ。
「やっと落ち着いてきた」
「そんな頃か」
「ははは、親父が死にそうになって帰ってきてな」
「ひいひい祖父ちゃんか」
「南方からな」
「生きていただけでもよかったな」
「それで一家で食べることに必死だったのが」
そうした時期を経てというのだ。
「落ち着いてわしも働いてな」
「それでモダンになったんだな」
「そのうえでここを歩いてな」
「ひい祖母ちゃんとデートしたんだな」
「言っておくがな」
曽祖父は曾孫にこうも言った。
「若い時のわしはハンサムじゃった」
「今で言うとイケメンか」
「それで婆さんは美人じゃった」
「全然想像出来ないな」
その話にだ、真之介は笑って返した。
「俺には」
「わし等が年取った姿しか知らんからか」
「ああ、とてもな」
「けれどそれでもな」
「その頃のひい祖父ちゃんとひい祖母ちゃんはか」
「そうでな」
それでというのだ。
「ここを歩いて横浜の街もな」
「歩いたんだな」
「中華街とかもな」
「あそこから行く商店街もか」
「そうだったぞ、まだ球場はなくて」
横浜スタジアムはというのだ。
「球団もな」
「昔は川崎だったな」
「あそこでな、応援に行くのもな」
「川崎まで行ってか」
「しておったが」
それでもというのだ。
「よく一緒にあちこち行ったぞ」
「そうか、俺にはわからない話だよ」
真之介は海を観つつ話した。
「その頃影も形もなかったしな」
「それは当然じゃな、まあわかるにはな」
「タイムマシンで行くしかないか」
「いや、その頃の写真があるからな」
「写真かよ」
「アルバムのな、何なら観るか」
「ああ、ひい祖父ちゃんがそう言うならな」
真之介はそれならと応えた。
「アルバム観せてくれるか」
「今からわし等の家に行ってな」
「観せてくれるか」
「ではな」
こうした話をしてだった。
二人で猛が妻の幹代と一緒に住んでいる家に行った、そこは真之介が両親と暮らしている家に近く彼もよく行き来していて馴染みの場所だ。
そこに入ってアルバムを観せてもらうと。
若くて明るい顔立ちの美男美女のカップル、スーツや当時の大人の女性の洒落た服装の彼等が笑顔でいた。後ろは海で。
写真は白黒だった、真之介はその写真を観て言った。
「これが若い頃のか」
「わしと婆さんじゃ」
「昭和三十年代のか」
「左様じゃ」
「そうなんだな」
「言った通りじゃろう、あそこでな」
あの海が見える場所でというのだ。
「よく汽笛を聴きながらな」
「デートしたんだな」
「そうじゃった、わしがモダンでな」
「ひい祖母ちゃ
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