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ニワトコの役目
第二章
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 そのうえでだ、彼等にあらためて申し出た。
「これからです」
「役目か」
「それを与えて欲しいか」
「そう言うのだな」
「お願いします」
 こうカムイ達に言う、するとだった。
 カムイ達はニワトコの長老の穏やかさとそれに熟考を見て思い彼等の中で話した。
「わかっているな」
「うむ、聡明な者だ」
「こうした者には大事な役目を与えるべきだ」
「そうすべきだ」
「ではだ」
「一つ大事な役目があったな」
「それを担ってもらおう」
 こう話してだった、ニワトコに向き直って告げた。
「そなたには人の死に用いられる様にしよう」
「人は極めて重要な生きものの一つだ」
「世界にとっても我等にとってもな」
「その人が死んだ時に役立ってもらう」
 こう告げたのだった。
「死んだ時に骸を包む筵を閉じ合わせる串になってもらう」
「そして墓標にもなってもらう」
「そなた達ニワトコにはその役目を与える」
「それでよいか」
「わかりました、死は生きものにとって絶対にあることです」 
 長老はカムイ達に確かな声で頷いて応えた。
「しかも重要な生きものの一つである人の死に関わる役目とは」
「光栄か」
「そう言うか」 
「はい」
 まことにと言うのだった。
「そう思います」
「そうか、ではな」
「これから頼むぞ」
「その役目担ってもらう」
「これからはな」
「謹んでお受けします」
 ニワトコの長老は笑顔で応えた、そうしてだった。
 一族の元に戻って役目の話をするとだった、誰もが喜んだ。
「やったぞ、役目が貰えたぞ」
「これで世界にいる意味が出来た」
「何と嬉しいことだ」
「よかった」
「しかもそんな役目が与えられるなんて」
「そんな大事な役目を任せて貰えるなんて」
「こんないいことはないな」
 長老も喜んで言った。
「そうだな」
「誰もが死ぬから」
「命あるものは」
「それだけにとても大事なことよ」
「そのことに関われるなんて」
「そんな大事な役目なんてね」
「そうだ、それならだ」
 長老はさらに言った。
「わかるな」
「うん、全力でやっていくよ」
「私達はね」
「そんな大事なお仕事だから」
「何があっても果たしていくわ」
「皆でそうしていこう」
 長老は笑顔で言った、そうしてだった。
 ニワトコは筵を止める串や墓標になった、それでだった。
 人々はニワトコの木を死んだ時に使う様になった、アイヌに伝わる話の一つである。今はアイヌの人達の墓も多くは石になった様だが。
 この話を知る人達は今もニワトコの木を大事にしているという、その木の役目を知っているからこそ。筵の串がニワトコであるならまさにそれが証である。


ニワトコの役目   完


         
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