第一章
[2]次話
牛乳と野菜ジュース
土田奈々はよく娘の志保に行っていた、黒髪を後ろで束ね面長の顔で切れ長の奥二重の目ときりっとした赤い唇に一六三程の背ですらりとした健康的なスタイルを持っている。
「いい?炭酸飲料とか甘いジュースよりもね」
「牛乳や野菜ジュースよね」
「あとお茶ね」
「そうしたものを飲む方がいいのよね」
「そう、身体にはね」
自分そっくりの外見のまだ小学生の娘に話していた。
「牛乳は栄養の塊でよ」
「野菜ジュースはお野菜だから」
「そうしたものを飲む方がいいのよ」
「そうよね」
「サイダーとかコーラとかよりもね」
「牛乳や野菜ジュースね」
「そうしたものを飲んでね、お母さんもね」
かく言う母もというのだ。
「よく飲んでるでしょ」
「うん、いつも牛乳とかそうしたジュース飲んでるわね」
一緒におやつを食べているからこそ知っていた、娘として。
「それじゃあ私も」
「そうしたもの飲んでね」
「そうするわ」
志保は母の言葉に頷いた、そうして牛乳や野菜ジュースを飲んで成長していった。母もまたそうしたものを飲んでいたが。
それでもだった、彼女は酒も飲んだ。しかし。
「ビールや日本酒よりも」
「ああ、ワインだな」
「ええ、ワインは身体にいいから」
夜に夫の佳忠眼鏡をかけて互角系の顔で穏やかな眉と目の黒髪を右で分けた自分より十センチは高い銀行員の彼と共に飲みつつ話した。
「飲むならね」
「そちらか」
「ええ、だから私もね」
「いつもワインなんだな」
「いや、飲みものってね」
これはというのだ。
「下手すると食べものよりもよ」
「健康に影響があるか」
「だから普段はね」
「牛乳や野菜ジュースで」
「それでお酒はよ」
「ワインか」
「ええ、それにまずい訳じゃないでしょ」
こうした飲みものはとだ、妻は夫に言った。
「そうでしょ」
「ワイン美味しいよ」
佳忠は白ワインを飲みつつ応えた、肴は冷奴である。
「かなりね」
「牛乳も野菜ジュースも美味しいし」
「それでだね」
「飲むといいのよ、美味しくて健康にいいなら」
それならというのだ。
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