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見込んでのスカウト
第二章

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「年配の人も家庭持ってる人も」
「酷いな、どんな会長なんだ」
「まあそれはその」
 晴香は口を濁した、だが何を言いたいかは村上もわかった。それで村上はここで自分の店が両親が高齢で以前より動けなくなりかつバイトに来ている親戚の大学生の子が就職して辞めることを思い出した。それでだった。
 晴香にだ、こう言った。
「うちに来ないかい?食堂と居酒屋やってるけど」
「ここが潰れたらですか」
「うん、再就職先が見付からないなら」
 それならというのだ。
「どうかな」
「いいですか?私で」
「料理上手だしいつもにこにことして優しいから」
 それでとだ、村上は晴香に笑顔で言った。
「是非うちにね」
「それじゃあ。実は再就職先が」
「見付からないんだ」
「はい、それでしたら」
 渡りに舟という顔でだった。
 晴香も頷いた、そしてだった。
 晴香は村上の店に再就職した、こうして彼は店に新しい働き手を迎えることが出来た。晴香は料理上手で動きがよくまた気立てもよく。
 店は老いた両親の分も辞める親戚の分も働いてくれた、そして二人はより親密になりやがて交際し夫婦にもなったが。
 店はさらに繁盛しパートの人にも来てもらう様になったが村上はそこで晴香が以前勤めていたグループの話を聞いた。
「あのテーマパークの赤字がですか」
「さらに増えて大規模なリストラでね」
 あの常連客がまた村上に店で話した。
「その時の不当解雇で団体で訴えられてね」
「赤字と裁判で、ですか」
「大変らしいよ」
「そうなんですね」
「いや、アホをトップにしたらね」 
 客はしみじみとした口調で言った。
「大変だね」
「そうですね」
「何もかもなくなってね」
「赤字の元凶だけ残って」
「今じゃ訴えられてだよ」
「首が回らないですか」
「そうなってるよ、そう思うとね」
 村上に鰯の味噌煮込み定食を食べつつ話した。
「あんたはよかったな」
「ええ、あの百貨店が潰れた時に」
「奥さんをスカウトしてね」
「それならと思って声をかけまして」
「よかったな」
「全くですよ、人にはちゃんとしないと」
「そしてまともな経営をしないとね」
 さもないと、というのだ。
「店も会社もね」
「駄目ですよね」
「全くだね」
「本当にそうですね」
 村上は客に晴香と共に働き忙しい中で応えた、晴香は今も二人分か三人分働き店は順調だった。村上はそんな中で彼女に声をかけてよかったと心の中から思うのだった。



見込んでのスカウト   完


                   2023・3・24
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