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鮫が出ると聞いたので
第二章

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「泳がれるならです」
「この中で泳いで下さい」
 ビーチのというのだ。
「本当に鮫は危ないんで」
「それじゃあ仕方ないわね」
 由利絵は監視員の話を聞いて頷いて言った。
「鮫が出るならね」
「ああ、ここで逆らって泳いでも」
「危ないだけだしな」
「それじゃあね」
「遠泳は止めよう」
「ビーチで泳ぎましょう」
「そうしよう」
 小此木も頷いた、そしてだった。
 サークルのメンバーは皆ビーチの中で泳いだ、だがたまたまビーチにいた丸坊主で大柄な筋肉だけある身体を持った面長の顔で人相が悪いあちこちに金色のアクセサリーを付け刺青まで入れている男が言った。
「アホか、鮫怖くて泳げるか」
「本当に危ないですから」
 先程の監視員がその男も止めた。
「ビーチの中だけで泳いで下さい」
「お前わしを誰や思てるねん、喜代波羅一仁やぞ」
「あの元プロ野球選手の」
 由利絵はその名前を聞いて言った。
「引退して今はここで遊んでるのね」
「今日は遊びに来たのかな」 
 小此木も他のメンバーも彼を見て言った。
「相変わらず柄悪いけど」
「何あのアクセサリー」
「刺青まで入れて」
「本当に柄悪いな」
「まるでヤクザ屋さんじゃない」
「わしが鮫に負けるか、ほな行って来るわ」
 監視員が止めるのも聞かずだった。
 彼は一人遠泳に出た、そして翌日の朝由利絵は合宿先の旅館で朝食の時に小此木達に対して話した。
「喜代波羅さん鮫に襲われて死んだわ」
「ああ、昨日か」
「遠泳に出てか」
「それでか」
「監視員の人が止めるのも聞かないでってね」
 小此木達にスマートフォンの記事を見つつ話した。
「書いてるわ、何か下半身がなくなって見付かったそうよ」
「ああ、食い千切られたんだ」
「鮫本当にいたのね」
「幾ら筋肉あっても」
「海の中で鮫に勝てる筈ないのに」
「鮫が出るって聞いたらビーチの外で泳がないことね」
 由利絵はしみじみとした口調で言った。
「本当に」
「全くだね」
「その辺りはちゃんとしないと」
「死ぬよ」
「喜代波羅さんみたいにね」
 小此木達はしみじみとして思った、そしてこの日も合宿を楽しんだ。この日は山に行ったがそこでも山のキャンプ場の管理人の話を聞いて楽しんだのでトラブルはなかった。


鮫が出ると聞いたので   完


                   2023・3・24
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