第一章
[2]次話
人間ドッグでの再会
家で妻にかなり五月蠅く言われてだ。
衣笠太一四十になったばかりのサラリーマンの彼は渋々人間ドックに行くことにした、やや面長で小さな目とそろそろ白いものが混ざってきている黒髪である。背は一七一程だ。
彼は会社でそのことを同僚に愚痴った。
「面倒臭いな、会社で年一度ちゃんと健康診断も受けて」
「まあそう言わないでな」
同僚は彼に笑って話した。
「奥さんだって心配してるんだし」
「だからか」
「人間四十にもなったらあちこちガタもくるし」
「それでか」
「人間ドッグで詳しく検査してもらって」
そうしてというのだ。
「チェックしてもらうのもだよ」
「いいか」
「健康ならそれでよし」
「悪かったらか」
「それで気を付けるってことで」
それでというのだ。
「いいだろ」
「じゃあ行くといいか」
「面倒臭くても」
それでもというのだ。
「いいと思うよ」
「じゃあ行くよ、もう予約取ったし」
「それじゃあ」
「ああ、調べてもらうよ」
こう愚痴った後でだった。
衣笠は人間ドッグに行った、そしてだった。
身体を隅から隅まで検査してもらってだった。
それが終わって会計の時にふと。
隣に見知った感じの中年女性を見た、面長で色黒で丸い目で黒い縮れた髪の毛で背は高井。その彼女に声をかけた。
「堂上さん?」
「それ私の旧名だけれど」
驚いてだ、女性は彼にこう返した。
「ひょっとして衣笠君?小学校一緒だった」
「五年六年って一緒だった」
「そうよね、私堂上晴香で今は結婚して鈴木になったけれど」
「鈴木さんなんだ」
「今はね、結婚してこっちに住んでるの」
「僕も今は結婚して」
そしてとだ、衣笠も言った。
「それでこっちに家建てて」
「暮らしてるのね」
「二十年ローンでね」
晴香に笑って話した。
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