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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第86話 アトラハシーズ星系会戦 その2 
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「砲撃じゃ。敵の正面中央前衛に砲火を集中せよ」

 両端の部隊が最大戦速による逆進を始めたタイミングで、爺様は新たに砲撃指示を出す。同時に第一部隊は左右に分かれながら、半戦隊単位での横行を開始する。コップの底に空いた穴が順次拡大していくようなシミュレーションではあるが、それをぼんやりと眺めている余裕はない。

 各半戦隊は指示に対して忠実に動いていて、行動はこちらの想定通りとも言えるが、敵艦隊もその規則的な動きを察知して、移動する半戦隊の間に向けて砲火を集中してくる。各半戦隊の往き脚を不揃いにして渋滞状態を作り上げ、少しでもこちらの戦力を砲撃射程に収めて殲滅しようとしてくる。

 口で言うのは簡単だ。だが前方両サイドと後背から砲撃を受け、前衛中央と後衛中央に損害を出しつつも、統制砲撃を切らさない。この帝国艦隊の練度の高さは尋常ではない。
 こちらも半戦隊の動きの鈍化に、爺様から強烈な叱咤が送られる。時間と共に砲撃面に立つ艦艇数は順次減っていくのだから、脚を止めたら殲滅されるだけだ。それに是が非でも近距離戦闘範囲に敵を迎え入れてはならない。

 そして一三二九時。ようやく旗艦エル=トレメンドが右翼三時方向へと移動を開始するが、敵の砲火が一気に艦周囲へと襲い掛かってくる。もはや有効な戦果を挙げることができないと判断したのか帝国艦隊は、最大戦速と思われる速度でこちらに接近してくる。複数の敵艦の砲撃がエル=トレメンドのエネルギー中和磁場と衝突し、強烈な閃光が艦橋全体を包み込む。

 その数秒後に今度は左舷前方に位置して旗艦の護衛を行っていた巡航艦ラービグ八九号が、敵の巡航艦の砲撃によって爆散する。船体内部の核融合エネルギーが奔流となってとなってエル=トレメンドの中和磁場を強烈に叩きのめす。
 度重なる被弾に薄くなっていた中和磁場はあっさりと破壊されエル=トレメンドの船体は一気に右後方へと押し込まれた。艦内はあらゆる方向に揺さぶられ……爺様の横でマイクを握っていた俺の肉体も司令艦橋の床から浮き上がり、中央エレベーターが格納されている壁に背中から叩きつけられる。
 
 一瞬の衝撃に息が止まる。痛さは感じない。骨が折れたとかそういう感じもない。計器類から発せられる光が一瞬落ち、外部を映すメインスクリーンのみの明るさだけが艦橋を包み込む中、俺は顔を上げると一瞬スクリーン左側を青白いビームが六本通過していくのが見えた。
 もしラービク八九号が撃沈せず、エル=トレメンドが当初の位置にいたら……そう考えると、背中に冷や汗が流れ……ようやく左肩に痛みが現れ、時間の流れが元に戻ったように感じる。

 俺は大きく二度深呼吸し、左肩を廻しつつ、計器類が再起動した司令艦橋を見回した。座っていた爺様とモンティージャ中佐とカステル中佐には特段異常はみ
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