第86話 アトラハシーズ星系会戦 その2
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振って応える。
「現在の戦闘可能艦艇数からフォーメーション?を構成すると、一片当たり一〇〇隻を切ってしまう。これでは敵の宙雷艇に各個撃破してくださいと言っているようなものだ」
「留まって戦う必要はありません。ひたすら敵側面を逆進し、味方第二・第三部隊の両端か後ろに回り込めばよろしいかと」
「それでもだ。近接火力が手薄になり、複数の片が粉砕されて大きな被害を出してしまう」
「しかし参謀長。このまま後退しつつ砲撃というのでは、被害は増すばかりです」
消耗戦はここにいる誰もが望まない。敵は中央突破によるこちらの組織抵抗の破壊を望んでいる。アスターテ星域会戦のように中央突破戦術を逆手にとった分裂逆進ができればいいが、生憎俺はヤンではないし、ここにいるのは第二艦隊でもない。というかどうしてヤンはあの三方包囲の失敗前という状況で、事前に分裂逆進をプログラムできるんだって話だ。それに第一、今から戦術プログラミングを作成する時間的余裕はない。手間はかかるが戦隊毎に旗艦から移動指示を出す方法だ。
「司令官閣下。それでは小官は、部隊の二分裂逆進を進言いたします」
俺の進言に、爺様は黙って一度メインスクリーンを見上げ、次に参謀長に視線を送る。参謀長の顔は厳しいが、それの進言に賛同しているようにも見える。そして改めて俺の方に顔を向けて問うた。
「具体的にはどうする?」
「後退しながら現在の方形陣から、半戦隊単位の一列横隊陣に変更いたします……」
現在五戦隊で構成されている第一部隊を一〇個の半戦隊に編成し、敵の進撃方向に対して垂直に並べる。これは戦隊毎に副司令がいるのでさほど難しくない。
次に左右両端に位置することになる半戦隊を〇時方向へ直進させる。その横の半戦隊は移動した半戦隊の真後ろの位置まで横移動した後、追従する。
中央付近の半戦隊が一番長い間敵の砲火にさらされることになるので被害は大きくなるが、横隊陣に並ぶ各半戦隊は常に敵艦隊の先頭集団に狙点を固定することで、集中砲火の効果が望める。敵艦隊を挟んで二列縦隊になったら、最大戦速で第二・第三部隊の両翼へ一目散に突き進む。
「第二・第三部隊は合流し敵部隊の六時方向に長方陣を形成。我々の機動に合わせて敵陣と距離をとりつつ後方への長距離砲撃。敵の進撃速度に合わせて適宜前進を行うよう指示すれば、戦果拡大が期待できます」
「彼らにはあくまでも長距離砲撃に徹せよというんじゃな?」
「はい。敵を殲滅させるのではなく逃走を促すのが目的ですので」
「よかろう。貴官の意見を採用する」
即断即決で爺様は各部隊に半戦隊単位の部隊編制と横隊を指示すると、約一〇分。敵との距離が中距離砲戦距離から近距離砲戦距離にまで縮まった一二四三時。被害をそれなりに出しつつも、辛うじて横隊が完成する
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