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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第86話 アトラハシーズ星系会戦 その2 
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りメルカッツは有能な指揮官だった。

 一時的な部隊の混乱を抑え、秩序を回復すると、陣形を三角錐形に変更する。どっかの誰かみたいに反転して応戦するような真似はしない。後背や両側面から砲撃を受け被害を出しながらも、一気に右斜め方向へと部隊主軸を変更し突進する。当然その方向にいるのは……

「敵艦隊! 当部隊に急速接近!!」
「敵宙雷艇、単座式戦闘艇(ワルキューレ)の発進を確認!!」

「マジかよ……」
 オペレーターの報告に、紙コップに入っていた紅茶に舌鼓を打っていたモンティージャ中佐は、呆れたように呻いた。

 過去の戦訓は当然理解しているだろうから三方から包囲される状況下において、絢爛たる一五〇年前のダゴン星域会戦のように防御心理に陥って消極的な球形密集陣を形成することはないにせよ、穴だらけの三包囲ゆえに各部隊の間に開いている空間を目指して逃走を図るものと思われた。

 そうなるだろうと考え、逃走を図る方向を(現状から比較的転針しやすい第一・第二部隊の中間と推定して)やや大きめに開き、第三部隊を底とする半包囲陣を形成し、ほどほど追撃しようとまで第四四高速機動集団司令部考えていた。その準備に咥えコップで俺はカーソルをバシバシ打っていたのだが、当てが完全に外れた。帝国軍は真正面から砲撃され、さらに後背両端から自軍以上の戦力に砲撃されることを覚悟の上で、一番数が少ない第一部隊を葬り去ろうと戦いを挑んでくる。

「……いや戦理に則っておるな」
 せめて一太刀といった自暴自棄に見えなくもないが、爺様は顎を撫でながら呟いた。
「第二・第三部隊に長距離砲を使わせないようにしつつ、無理やり近接戦闘に持ち込んで儂らを潰し、改めて増援部隊と合流して再戦を挑む腹積もりじゃろう」

 このままだと後背に回った第二・第三部隊が長距離砲戦を挑むなら第一部隊を巻き添えにしてしまう。中距離砲戦距離まで接近すれば、宙雷艇やワルキューレでぶちのめすぞということだ。

「まともに戦うのは無理じゃな」

 第一部隊の運命は戦うことが決まっている。左旋回しようが右旋回しようが側面を突かれるし、正面からぶつかれば圧倒的な近接戦闘能力差で磨り潰されてしまう。隙があればそこを圧迫しつつ、敵の攻撃主軸線を躱すように部隊を移動させることが理想だが手数が足りない。

「フォーメーション?はどうでしょうか?」

 要塞対要塞で、ヤンが寡兵を率いてイゼルローンに帰還する際、数的有利なケンプとミュラーを円筒形の陣形によって包み込み、多方面からの砲火を浴びせていた。有効な作戦だと思うが、ここは回廊ではなく障害物の無い宙域であり、突破した敵が再包囲する危険性もある。

「ダメだ。数が足りない」
 あっさりと爺様を挟んで向かいに立っているモンシャルマン参謀長は首を
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