暁 〜小説投稿サイト〜
ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第86話 アトラハシーズ星系会戦 その2 
[3/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
能力に絶大な信頼を寄せていたのだろう。だいたいあの二五〇〇隻が帝国軍だとして第三部隊を打ち破ってきたというのであれば、それほど離れているわけでもないのだから容易に光学的に観測できる。以前誰かに楽観主義者と鼻で笑われたことを思い出しつつ、直立不動でメインスクリーンではなく、何故か俺を見つめているブライトウェル嬢に言った。

「ブライトウェル伍長。こんなタイミングで悪いが、紅茶を淹れてきてくれ。ほんの少し『芳香剤』を入れて」
「……了解いたしました」
 ちょっとだけ瞳が開いた後、久しぶりに見る一六歳の女の子らしい笑顔と完璧すぎる敬礼を見せ、嬢は回れ右で階段を駆け降りていく。その後ろ姿をのほほんと見送ったあと艦橋の方を振り返れば、呆れた五人の一〇の瞳が俺を射すくめる。
「ボロディン少佐、紅茶など飲んでいる暇など……」
 最初に口火を切ったのは、嬢とも料理で交流のあるカステル中佐だったが、その途中で再び戦闘艦橋の方から索敵オペレーターの声が響き渡る。

「識別信号受信!! 第三部隊です!! 第三部隊が、敵の後背を砲撃しております!!」

 よっしゃー! という副長の声と、司令艦橋の高さまで飛び上がってきた軍用ベレーの姿に、爺様はやれやれと溜息をついて俺を手招きで呼び寄せると、囁くように言った。

「遅刻したバンフィには少しキツめのお仕置きが必要だと思うんじゃが、どうかの?」
「五稜の星を一つ、差し上げればよろしいのではないでしょうか?」
 タイミングとしてはちょっと遅いが、それはたぶん第二部隊の分のデコイも引っ張っていたからだ。交戦時間繰り上げという通信だけで、『三方向からの個別進撃』を構想できる。与えられた権限の中で別動隊指揮官としては十分すぎる判断能力と指揮統率能力を見せたと俺は思う。
「そうじゃなぁ……」

 呆れたと言わんばかりの口調で爺様は応え首を傾けると、その視線の先には僅かなピート臭を漂わせる紅茶を淹れてきたブライトウェル嬢が立っているのだった。





 当然、二五〇〇隻の出現に驚いたのはこちら側だけではない。

 しかし最初はそれを味方の増援とでも思ったのだろうか。確かに最初に現れた二四〇〇隻という数字に囚われたのだと思う。既に第一部隊・第二部隊と合わせて一六〇〇隻を把握した帝国側は恐らく、 『残りは八〇〇隻、均等に部隊を分けてきたな』と考えた。

 現実のところそれは正しいのだが、そこに二五〇〇隻の部隊が現れたからドーリアないしダゴン方面からの意図しれぬ増援、と帝国側も考えたのかもしれない。それで初動が遅れた。第三部隊は必要以上にゆっくりと近づき、光学で十分に照準を合わせて砲撃を開始し、三斉射で帝国艦隊の後衛駆逐艦と宇宙母艦か宙雷艇母艦を合わせて五〇隻ほど血祭りにあげた。

 だがやは
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ