六十九 形勢逆転
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「本物は」
「此処にはいない」
同じ結論に辿り着く。
ならば本物の“輪廻眼”の所有者は別にいるはず。
遺体を遠隔操作できるならば本人は安全地帯にいる。だがそう遠くにはいないだろう。
この里内部には必ずいると踏んで、だからこそ大蛇丸は【万蛇羅の陣】を仕掛けた。
あの術最後の目的であり、最大の狙い。
それは…───。
【万蛇羅の陣】は数多の蛇を口寄せする術。夥しい数だが、蛇単体の強さはそうでもない。
要するに数の暴力だ。だが、大小種類を問わず様々な蛇は数だけは多い。
当然、小柄な蛇は建物内への潜入捜査などお手の物だ。
崩壊した塔だけでなく周囲の建物へ侵入し、内部を探り、主である大蛇丸へ情報を伝える。
そしてあわよくば───。
「本物の神とやらを焙り出してやろうじゃないの」
大蛇丸が薄く嗤う。
同時に、戦場から遠く離れた塔の上で、【万蛇羅の陣】で呼び出した中でも最も小さな存在が、静かに主に従っていた。
暗い塔。
人っ子ひとりおらず、人の気配もない。
外で降り続ける雨音だけが、まるで水琴窟のように、深く深く響き渡る。
その雨音に雑じって、シュルシュル、音もなく、ソレは床を這った。
足音も立てないソレは、目的の存在を見つけると、静かに身を捩らせて登り始める。
そうして、対象の首筋へ音もなく牙を突き立てようと、鎌首をもたげた。
毒が滴るその牙を。
ペイン六道を操る“輪廻眼”の所有者───即ち本物の…長門へと。
「おい、シカマル」
奈良一族しか出入りを許されぬ森。
そこで焦土と化した土を掘り返していた奈良シカクは己の息子を手招いた。
怪訝な顔をしつつも「なんだよ」と父のもとへ向かったシカマルは、シカクの今更ながらの質問に、ただでさえ目つきの悪い双眸を更に鋭くさせる。
「おまえ、あの『暁』の連中には逃げられたんだよな?」
今でこそ生きているとわかったが、当時死んだとされた師であるアスマの敵討ちをする為に、シカマルは『暁』の不死身コンビの片割れを、此処、奈良一族のみが出入りできる森へ追い込んだ。
そこで生き埋めにした飛段は、得体の知れないフードの人物に救い出され、結局は取り逃がしてしまう。
アスマが生きているとわかった今になっても思い出したくない失態だ。
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