第一章
[2]次話
エチルアルコールの科学的役割
ロシアのとある大学で科学を研究し教えているアレクサンドル=プシャーチンはある日自宅で妻に尋ねた。
「ウォッカがないんだが」
「あら、切らしていたの」
「いや、切らしたはないだろ」
プシャーチンは妻のオルガの返事にむっとなって返した、丸眼鏡で白いもじゃもじゃした髪である。背は高く肉がついている体格だ。目は黒だ。
「ウォッカがないなんてな」
「ワインない?」
「あったな」
見ればそちらの酒はあった、それもボトルが何本もだ。そしてよく見れば。
「ブランデーもあるな」
「そっち飲んだら?」
「そうだな、では飲もう」
丸々と太ったグレーの目で黒髪の妻の言葉に頷いてだった。
プシャーチンは肴のチーズや干し肉を出してだった。
そうして飲みはじめた、そうしつつ妻に言うのだった。
「酒に入っているものは何か」
「何ってアルコールでしょ」
「そうだ、エチルアルコールが入っていてな」
妻に自分でジョッキにワインを入れつつ話した。
「そしてだ」
「飲むと酔うのよね」
「人をそうさせる、そしてだ」
飲みつつさらに言うのだった。
「この酔うのがだ」
「いいっていうのね」
「そういうことだ、酔えば血流がよくなり」
「温まるのよね」
「身体がな、しかしな」
チーズ、かなり臭いウォッシュチーズを食べつつの言葉だ。ジャムを舐めながら紅茶を飲む向かい側に座る妻に輪した。
「問題がある」
「飲み過ぎたら身体に悪いわね」
「違う、それは言うまでもない」
「そうなの」
「肝臓にも悪いし脳にもな」
「悪いわね」
「だがそれはだ」
酒の害を言いながらも飲む。
「最早な」
「言うまでもないのね」
「今更だ、そんなことを気にしてはだ
「酒が飲めるか、だからわしが言いたいのはな」
「健康のことじゃないのね」
「飲んで酔ってだ」
そうしてというのだ。
「冬にでも外に出てな」
「ああ、そのまま寝たら」
「酔い潰れるとな」
その時はというと。
「凍死する」
「ロシアではね」
「これが案外多くな」
ロシアではというのだ。
「交通事故よりもな」
「多いわね」
「この国で酒を飲むなというのはな」
「言った人は終わりね」
「ロマノフ朝は酒に規制をかけようとしてな」
そうしてというのだ。
[2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ