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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第85話 アトラハシーズ星系会戦 その1
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とになり、挟撃体制をとりやすくはなる。だが同時に敵の攻勢を誘うようなものではないだろうか?

「敵がこちらを少数と見ていないと、閣下はお考えですか?」

 同じような疑問を持ったモンシャルマン参謀長が問うと、果たして爺様は鷹揚に頷いた。

「もし儂が敵の指揮官で、こちらが八〇〇隻程度の弱小部隊であると初めから分かっておったら、急戦速攻を選択する。じゃが最初に観測した二四〇〇隻という数字に囚われておるからこそ、根拠地から出動するのが遅かったのじゃ。時間が経ち儂らの実戦力が分かれば容赦はせんじゃろうが、それが分かるのは敵艦の索敵範囲に入ってからになる」
「では……」
「ジュニア。別動隊の行動可能な航行速度を想定すると、予定会敵位置に到着する時間はどのくらいじゃ?」

 爺様からの質問に、一度だけモンシャルマン参謀長に視線を送る。参謀長の頷きに、俺は三次元投影機を起動し、計算する。各艦ともデコイを引っ張っての移動である故に、出せる速度は限界がある。

「第三戦速まで引き上げて一二二〇時と思われます」
「では会敵位置をどれだけ前に動かせば、別動隊を一二〇〇時に敵の左側背へ回り込ませることができる?」
「……一〇時三〇分、距離六.八光秒前にズラせば」
「一一三〇時に儂らがその敵の正面、六.二光秒の位置に向かう航路は?」
「……一時四四分、第二警戒速度まで落としていただければ」
「よし。麾下全艦に通達。進路一時四四分、第二警戒速度」

 爺様の命令をファイフェルが復唱し、光パルス短距離通信によって第一部隊全艦に伝達される。会敵予定時刻が修正され一一三〇時となり、残りは一時間弱。別動隊が俺の予想通り動いてくれれば、『耐える時間』は三〇分となる。圧倒的優勢な敵を正面に対して三〇分をどう耐えるか。俺は自分の席に戻り、艦隊運動シミュレーターを稼働させる。敵が自身の索敵範囲にこちらを収めるのは一一一五時前後。そこで偽装艦隊は完全に露見する。

 この本隊が敵に対してかろうじて優勢な点は戦艦の数だ。勿論絶対数においては少ないが、比率から言えばほぼ同じ。巡航艦の有効射程より長い距離での砲戦となれば、砲火力差はかろうじて一対二以下。付かず離れずを許してくれるような敵だといいが、宇宙母艦を有している以上、帝国軍は是が非でも絶対優位な近接戦闘に持ち込んでくるだろう。そうさせないためには……

「閣下。機雷を前方に散布してはいかがでしょうか?」
 散布範囲にもよるが八〇〇隻余が放つ機雷の量はたかが知れているが、そこに機雷があるというだけで掃射の必要が生まれ、帝国軍の接近戦への意思が低下するのではないか。
「今はダメじゃ。前方投射が低加速である以上、双方の戦力認識下での防御効果は薄い。その上、機雷の存在自体が味方の砲撃行動を阻害する。撒くならこ
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