第二章
[8]前話
「本当にね」
「いなくなるんですね」
「ええ、そうよ」
「そうですか」
そう言われてもだった。
美穂は半信半疑だった、そうしてそのクレーマー吊り上がった目と尖った口で眼鏡をかけいつもあら捜しをする様な態度で周りを見ている年老いた男を見ていた。
美穂は本当にこの男がいなくなるのかと思っていた、だがやがて実際に店に来なくなり本当にそうなったことに驚いていると。
ここでだ、裕子が美穂に話した。
「あの人脳梗塞で倒れて入院してるそうよ」
「脳梗塞ですか」
「ええ、命に別状はないそうだけれど」
それでもというのだ。
「そうなったそうよ」
「そうなんですね」
「ああしたクレームばかり言う人っていつも不平や不満抱えてね」
「それで言うんですね」
「いつもそうした感情持っていたら」
心にというのだ。
「身体にもくるのよ」
「病は気からですね」
「そうよ、だからね」
それでというのだ。
「ああなるからよ」
「クレーマーの人はですね」
「そのうちいなくなるのよ」
「身体壊すんですね」
「そうよ、だからね」
「ああした人はですね」
「やり過ごせばいいのよ」
裕子は美穂に笑って話した。
「これからああした人が出ても」
「気にしないことですね」
「そうよ、いいわね」
「わかりました」
美穂は確かな声で頷いた、そして大学に入ってもこの店でアルバイトを続けたがそこでその老人を久し振りに見た、杖をついて歩くのだけで精一杯な彼にはかつての姿は見る影もなかった、喋る言葉すらなかった。
クレーマーの末路 完
2023・2・19
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