第一章
[2]次話
好色一代男が来ているので
津島紅美は一六七の背でスリーサイズは上から九十、五十八、九十二というものである。太めの長い眉とはっきりした二重の目に赤い唇にすらりとした鼻で耳や顔の形もいい。八条グループの系列会社の県内でも有名な美容院を幾つも経営している会社の令嬢である。
自身も美容師であり結構な腕前でしかも美人であり人気美容師となっている。その彼女が会社を継ぐことになっている兄の正芳にだった。
「今度会社の慰安で海に行くからな」
「じゃあ水着ね」
「それを着ていけよ、ただな」
「ただ？」
「お前スタイルいいし美人だからな」
一八〇以上の長身で妹によく似た外見で黒髪をセットしている兄は言った。会社では真面目でコツコツやるタイプとして知られている。
「気をつけろ」
「これでお店では人気なのね」
「実はな」
ここでだ、兄は。
真剣な顔になってだ、妹にこう言った。
「今回あの止さんが来るらしいんだ」
「止さんってあの」
「ああ、八条止さんだよ」
「うちのグループの親会社の経営者の一族の中で」
「無類の遊び人でな」
「女好きで有名な人よね」
「ああ、だからな」
「私彼氏いるのよ」
しかも一途である。
「だったら」
「わかるな」
「海だと水着だけれど」
「お前ビキニとかスリングとか好きだろ」
「派手な水着がね」
「けれどな」
それでもとだ、兄は妹に言った。
「もう遊びを極めたみたいな」
「遊び人の人が来るから」
「だからな」
それでというのだ。
「派手な水着はな」
「声をかけられるから」
「止めろよ」
「わかったわ」
紅美は兄の言葉に頷いた、それでだった。
会社の海の慰安のレクレーション彼は何でもない半ズボンとシャツの様な水着を着て参加した、すると。
社内の誰もがだった。
「あれっ、地味だし」
「津島さんにしては」
「そんな地味な水着なんて珍しいですね」
「やっぱりそれって」
「ええ、止さんが来られるっていうし」
紅美自ら彼の名前を出した。
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