吉報編 旅の終わりを見届けた者達
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昨日も、酒樽が空になるまで飲んでたのにっ!」
「そ、そんな固えこと言うなよぉ〜ッ!」
その頃。ユクモ村で活動していたヒスイ・ムラクモは、「手紙の内容」を口実にして酒樽に手を伸ばそうとしていたベン・イライワズを必死に制止していた。そんな2人の口論を、村長をはじめとする村の人々が生暖かく見守っている。
「うふ、うふふっ……! なんて素敵な『引退』でございましょう……! クウド様クウド様っ、早速クサンテ様にお届けするお祝いの品を見繕わなくてはっ……!」
「……それは俺がやろう。お前に任せてたら、どんなヤバいものを選んでくるか分かったもんじゃない」
この日の狩猟を終え、拠点であるタンジアの港に帰って来たところで、ヴェラ・ドーナとクウド・ウォーウも同期の「引退」を報せる手紙を受け取っていた。妖しい笑みを浮かべている相棒の表情から不穏な気配を感じていたクウドは、牽制するようにヴェラから手紙を取り上げている。
「ふむ。まさか、あのイノシシ姫が真っ先にこんな形で『引退』することになろうとは……世の中、分からないものだな」
「ねぇ……一応聞きたいんだけど、これって御祝儀とか送らないといけないヤツ?」
「リリィベル……あんたねぇ、こんな時にまでケチ臭いこと言ってるんじゃないわよ」
「う、うっさいわねっ! ちょっと言ってみただけよっ!」
船型の集会所を中心に形成されるキャラバンの市場、バルバレ。その移動型のコミュニティを活動拠点とし、各地を転々としているアルター・グラミリウス、リリィベル、ジェーン・バレッタの3人は、同期から報された突然の「引退宣言」に顔を見合わせていた。
アルターが感慨深げに何度も頷く一方、手紙の内容に眉を顰めるリリィベルの守銭奴振りに、ジェーンはため息混じりに苦言を呈している。彼女達の些細な言い争いは、周囲の商人達から奇異の視線を集めていた。
「そうか……君もようやく、自分の幸せを見付けられたんだね。おめでとう、クサンテ姫」
「ハンターの世界は常に、狩るか狩られるかのどちらかしかない。……そこに身を投じていながら、人としての幸せを掴める者など、ほんの一握りだ」
「その幸運に感謝して……あなたもしっかりと、サリア様を守り抜くのですよ。ソランお父様」
「あぁ……分かってるよ、2人とも」
ポッケ村を活動拠点としているソラン・ハーシャルも、同期の「引退」を報せる手紙の内容に穏やかな微笑を浮かべていた。元ハンターである最愛の妻・サリアの妊娠が発覚した直後ということもあり、彼の表情は幸福の色に染まり切っている。
そんな仲間の様子を見つめている、イヴ・オーマとブリュンヒルト・ユスティーナ・マルクスグラーフィン・フォン・ホーエンブルクの2人も、優しげな笑みを咲かせていた。共にパーティーを組ん
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