吉報編 旅の終わりを見届けた者達
[1/4]
[8]前話 前書き [1]次 最後
ユベルブ公国の国境線付近に位置する大渓谷「リュドラキア」。
その地で繰り広げられたラオシャンロンとの死闘から、約数ヶ月の時が流れ――上位ハンターへの昇格を果たした「宝玉世代」の狩人達は皆、それぞれの道を往き、ハンターとしての高みを目指し続けていた。
公国の未来を賭けたリュドラキアの戦いに端を発する、25人の狩人達が紡ぐ25の英雄譚。それらは「伝説世代」の逸話に次ぐ新たな歴史となり、人々の営みの中で記憶されて行く。上位に昇格してからまだ数ヶ月だというのに、彼らの活躍はすでに現大陸全土にまで轟くようになっていた。
――だが、その中で2人だけ。いち早く、自らの英雄譚に終止符を打ってしまった者が居た。
かつて共にラオシャンロンと戦い、リュドラキアの砦を守り抜いた同期達が活躍を重ねて行く中。その2人は同期達にも劣らぬ稀有な才能を持ち合わせていながら、ハンターを「引退」してしまったのである。
その報せを綴った手紙が、現大陸や新大陸の各地に散らばっていた同期達の元に届いたのは、2人の「引退」が確定してからすぐのことだった。いずれは「伝説世代」すらも超えるであろう逸材達の電撃引退。それは本来、とてつもない悲報であるはず。
だが。実際にその手紙を受け取った者達にとって、それは悲報などではなく。むしろ、これ以上ない「吉報」だったのである。
引退を決意した2人の同期から届いた手紙を目にした「宝玉世代」の狩人達は皆、優しげな微笑すら浮かべていたのだ。
「全く……あのどうしようもないイノシシ姫を『捕まえちゃう』なんて、物好きな騎士様が居たのものね。……でも、良かったじゃない。こんなどうにもならないことだらけの世界で……それでも、大切な人と巡り会えたんだから」
「クサンテさん……! 良かったです、本当に……本当にっ……!」
新大陸の調査拠点アステラを中心に活動していた、ロエーチェとクゥオ・アルグリーズ。リュドラキア防衛戦以来、パーティーを組むことが多くなっていた彼女達は、郵便屋のアイルーから渡された手紙の内容に顔を見合わせ、頬を緩めている。
「へっ……そうかい、そうかい。あの猪突猛進の化身みたいなイノシシ姫が……ねぇ。今日ばっかりは、祝い酒ってことで飲むしかねーなァ……」
「わぁあ……! よ、良かったあ……! クサンテさん……死んだと思っていた人に、また会えたんですね……! こんな素敵な奇跡が、この世にあるなんてっ……!」
現大陸のユベルブ公国第3都市フィブル。その街を拠点とする専属ハンターとして活動しているアーギルは、口角を上げて酒瓶を手にしている。彼とパーティーを組んでいるリリア・ファインドールも、手紙の内容を目にして喜びを露わにしていた。
「……本当に、おめでとうございます。あなたの勇気と献身
[8]前話 前書き [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ