変な客
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が、講義の時間はあまり人が寄り付かず、メンテナンスの作業員の他は、人が立ち入ることは多くない。
その時計塔の屋上、時計部分の目と鼻の先で、ハルトたちはやってきた。
「それで、私に用とは何でしょう? ウィザードさん」
見滝原の街を一望できる手すりを背に、えりかは尋ねた。
春の温かくも涼しい風を受けながら、ハルトは頬をこすった。
「ウィザードさんって……それ、名前じゃないんだけど」
「あれ? あの金髪の綺麗な人にそう呼ばれていたから、そういう名前なのかなと」
「可奈美ちゃんたちもいたよね、あの場……ハルト。松菜ハルトだよ。よろしくね」
「オレは多田コウスケってんだ! コイツと同じ、魔法使いやってるぜ」
ハルトの自己紹介に便乗して、コウスケも名乗る、
肩に乗りかかって来たコウスケの腕を振り落としたところで、えりかも名乗った。
「改めて、蒼井は、蒼井えりかです。シールダーのサーヴァントをやっています」
「君は……何で、聖杯戦争に参加しているの?」
ハルトがそれを口にした途端、空気が凍り付いた。
えりかは口をしかめ、目元を暗くした。
「……分かりません。蒼井には、願いも……分かりません」
嘘ではないと願いたい。
時計塔の風を受け、えりかの髪が靡く。
左腕を抑える彼女は、静かに首を振る。
「もしかしたら……私が死ぬ直前に思った、あのことを、聖杯が叶えようとしたのかもしれません」
「……あのこと?」
「大した事じゃないです。それこそ本当に……その気になれば、今からでも叶えられる、そんなことです」
彼女の言葉が続くたびに、その尾尻が小さくなっていく。
ハルトはしばらくえりかを見つめ、口にした。
「俺は戦いを止めたい。こんな、他の人たちを傷付けながら続いていく聖杯戦争を。それは、ここのコウスケや、この前一緒にイリスと戦った皆だって同じだよ。君はどう?」
「私は……」
えりかが答えようとした、その時。
空気が、爆音に震えた。
「何だ?」
発生源は、大学の近く。広場がある場所から、煙が上がっている。
「……何かあったな」
ハルトとコウスケは顔を合わせ。
大急ぎで時計塔を降りて行った。
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