変な客
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だった。
首からマゼンタカラーのポケットカメラをぶら下げており、入店したと同時に店内を見渡している。
「お好きな席へどうぞ」
「……」
可奈美が案内すると、青年は窓近くのテーブル席に腰を落とした。
可奈美は流れるようにメニュー表を渡す。
「ご注文がお決まりになりましたらお呼びください」
「うさぎ……とでも言えばいいのかな?」
青年はカウンターを指差しながら言った。
響がカウンターの定位置にティッピーを置き直しており、ティッピーはなされるがままにボーっと青年を見つめていた。
「申し訳ありません。非売品です」
チノがココアと初対面の時も、同じ対応をしていたらしい。可奈美は、チノと同じ対応をしてみるが、青年は、分かっていた返答だとでもいうように、次の言葉を紡ぐ。
「コーヒー一杯注文すれば一回撫でられる、とか言うのか?」
「そもそもそんなサービスはやってないんだけど……」
「うわ……変な人来ちゃったね」
響の同情の視線を感じながら、可奈美は接客応対を続ける。
「あの、ご注文を……」
「コーヒー」
「コーヒーって……」
アイス? ホット?
それを聞きただそうとするよりも先に、青年は可奈美に手のひらを向けた。
「おっと待て。折角だ。俺が最高のコーヒーってものを作ってやる。ありがたく思え」
ポケットに手を入れた青年は、その長い足を駆使して立ち上がる。そのまま彼は、我が物顔でカウンター奥の厨房に入っていく。
「すごい変な人だ」
響の声が最後にそう付け加える。
「ああ! お客様! 困ります!」
止めようとする可奈美をすり抜け、青年はそのままカウンター内部の厨房へ足を踏み入れた。
その際可奈美をカウンターから引き出し、我が物顔で厨房に入った。
「ふわああああああ!」
「うるさい」
突然の見慣れぬ侵入者に悲鳴を上げるティッピーの頭を鷲掴みにし、青年は豆を焙煎する。あっという間にコーヒーを作り終え、背後の棚からティーカップを取り出し、注ぐ。
「出来たぜ」
彼はそう言って、コーヒーをカウンターに置く。
それは。
「何……?」
「これ……?」
カウンターに座り直した可奈美は、響と声を合わせる。
いつ使うのだろうかと疑問に抱いていた大きめのカップ。その中心を、白いクリームで中心を縦断。その左右に、目のように大きなすだちを乗せている。
「もしかして……キャラ弁?」
だが、判断材料が少ない。
特徴としては、その目に無数の白いクリームが縦断していることだろうか。
「の……飲んでみる?」
「まあ、作ってくれたし……」
可奈美と響は顔を見合わせ、それを口に含む。
そ
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