第84話 死地へと送り込む
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り、その指揮も本来俺が取るべきものなのかもしれない……だが希望したところで、爺様は承認してくれないだろう。無駄飯喰らいと言われたマーロヴィア防衛部の時とは違い、艦隊の次席参謀にはやるべき仕事がそれなりにある。
「士官学校受験を止めるなら、今のうちだぞ」
誰かを犠牲にして作戦を成功させる。エル=ファシルで民間人を見捨てて逃走したリンチ少将を父に持つ彼女にとって、それは酷な任務となるだろう。特に戦略研究科を希望する彼女にとっては。だが、俺の言葉に一瞬呆然とし、その次に怒気を現し、最後は微笑を浮かべるという面相で応じた。
「お気遣いありがとうございます。ボロディン少佐」
笑顔が怖いと思ったことは一度や二度ではない。ボロディン家は特に女性が多く、しかもプライドが高くて気が強い(ちょっとばかりメンドクサイ)人ばかりだったから遭遇機会もそれなりにあった。が、その中でも今回のブライトウェル嬢の笑顔はとびぬけて危険性が高い。普段から感情をあまり大きく見せない彼女だからこそ、余計に怖い。
「ですが既に士官学校入試事務局には願書を提出済みですので、問題ありません」
一瞬だけ司令官公室と繋がっているミニキッチンにブライトウェル嬢の視線が動いたのは間違いない。そこは爺様用の接客セットや救急ツールなどが仕舞われているが、それに加えてディディエ中将からの物騒な贈り物(二本目・実刃付)も隠されている。
少なくともさっきの俺のセリフは、彼女の『優しいエル=ファシルの叔父さん達』を死地に追いやる男が言うべき言葉ではなかったなと、胸の奥底で深く自省するのだった。
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