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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第84話 死地へと送り込む
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きモンシャルマン参謀長を呼び寄せ、改めて力のある鋭い目で俺を見て言った。

「この星系に現有する敵戦力が我々の同数以下と想定してじゃ、偽装艦隊を二つ出すのはどうじゃ?」
「一方はヴァンフリート方面への跳躍宙点に向けてとは思いますが、もう一方はどちらに?」
「トルネンブラ星系への跳躍宙点への最短航路じゃ」

 モンシャルマン参謀長が爺様の回答に喉を鳴らす。単純な二択を敵部隊に示し、敵を能動化させこちらの意図的に動かす案だ。偽装艦隊側に引っ掛かれば、本隊は安全距離をとって第二惑星軌道上を通過して跳躍宙点へと向かえる。敵艦隊が迷って部隊を二つに分ければ、数的優位を確保できる。妙案ではあるが……

「敵が第二惑星軌道上から動かなかった場合はいかがいたします?」
「我々の同数以下であることが前提じゃ。多少の戦力差であれば力で中央突破する。我々よりはるかに多い場合は、判明時点で転進。ユールユール星系に撤退する」
「そうなると当集団の目標はカプチェランカでの合流からユールユール星系における遅滞戦闘行動、となりますが……」
「……ビュコック閣下」
「なんじゃジュニア?」
「偽装艦隊を二つ出すのであれば、当集団を二つに分けてはいかがでしょうか?」

 増援の見込みのない戦域で、部隊をさらに二つに分けるのは兵力集中運用の原則に反する。下手をすれば各個撃破される。その危険性はあるが、敵が多数の場合には逃げ切れる可能性がより高くなる。

「二分するというと、どのようにかね?」

『バカなことを言うな』と頭ごなしに否定されてもおかしくないにもかかわらず、モンシャルマン参謀長は咳払いをした後、俺に向かって問うた。それだけとってもウチの司令部が人格的にも知性的にも健全であると安心できる。ど真ん中に短気で頑固な爺様はいても、だ。
 そんな眉を潜める爺様に許可をとり、司令官席のモニターにアトラハシーズ星系の星図を表示して、俺は説明する。

「当集団を旗艦部隊とそれ以外の部隊の二つに分け、それぞれがデコイを出し双方とも二四〇〇隻の一集団となるように偽装いたします……

 旗艦部隊は第二惑星軌道を避ける自然曲線をなぞりつつトルネンブラ星系への跳躍宙点への航路を、それ以外の部隊は第二惑星軌道上の敵艦隊への直線航路をとる。

 相互の連絡距離が最長になるのは一一時間後。それまでには爺様の言う通り敵艦隊は何らかの行動を示すだろう。旗艦部隊の進攻を阻止するか、それとも現状を維持し第二・三部隊の正面攻撃を迎撃するか、兵を二分してそれぞれ対処するか。

 敵兵力が過大である場合は速やかにユールユール星系方面へ離脱する。敵が三〇〇〇隻程度の場合は、時間差が付くことになるが戦闘を選択する。

 敵が第二惑星軌道上で迎撃する場合は、旗艦部隊がその右側面か
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