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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第84話 死地へと送り込む
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相手もそれを見越してきたようだ。

「これはどうにも一戦交えなければならんようじゃな」

 敵戦力を無視してトルネンブラ星系への跳躍宙点に向かうことも考えられたが、跳躍宙点に到着する前に後背からの攻撃を受けることは間違いない。元からのアスターテ星域防衛艦隊、ダゴン星域からの戦力分派、ヴァンフリート星域からの増援も想定される。

 そもそもとして、本隊がカプチェランカを攻略するのを助けるのが目的の強行軍だ。戦うことは充分に計算してはいたが、まとまった戦力をこの戦域に集結させた帝国軍の指揮官は少なくとも近隣星域レベルで俯瞰的かつ冷静に対応できる人物とみるべきだ。もっとも昨年のアスベルン星系遭遇戦でも数と質に差がなければ、苦戦は免れなかったわけだし、今度は立場が逆になる。

 即座に爺様はモンティージャ中佐に強行偵察艇による艦隊全周への偵察哨戒を、カステル中佐に部隊の資源備蓄状況の再確認を、モンシャルマン参謀長に第二警戒速度での移動と陣形再編を指示した後、俺を呼び止めて問うた。

「何か言いたそうじゃが、今のうちに言っておいた方がいいのではないかの?」
「正面の敵艦隊の数にもよりますが、今のうちに偽装艦隊を出しておいた方がいいのではないと」

 集結中の敵が一万隻を超えるような大軍であれば、真っすぐ近づいて戦うのは自殺行為だ。五〇〇〇隻でもほぼ同義だろう。帝国軍が事前に作戦を察知し数万隻を動員していない限り、帝国軍の戦力を本隊が攻略の間、アスターテ星域に引き付けるというダゴン星域攻略戦への当部隊の任務は果たせたと言っていいし、極度の戦力差がある場合は撤退の許可も出ている。

 ただ第四四高速機動集団がアスターテ星域に侵入した時点において、帝国軍のドーリア星域への強行偵察が行われていた。防衛艦隊全戦力がこのアトラハシーズ星系に到着するには七日ではギリギリ。(同盟軍が認識している範囲では)まともな補給基地のないアスターテ星域だ。集結できたとしても燃料の補給や強行偵察で負った損傷修理には時間がかかる。

 事前の情報分析で得ているアスターテ星域の防衛艦隊総数は二〇〇〇隻ないし三〇〇〇隻。指揮官は最近交代があったらしく不明。まともな指揮官ならば後方に増援を要請するはずだし、ジャムシード星域に大規模な同盟軍の存在を察知した段階でイゼルローンからも救援が出るだろう。

 となると、ヴァンフリート星域からの航路に敵艦隊が出現する可能性が高い。勿論帝国軍が同盟軍本隊のいるカプチェランカの防衛を無視してトルネンブラ星系との跳躍宙点に出現する可能性もあるが、可能性は極めて低い。ならば偽装艦隊を出して増援部隊の注意を引き付け、味方本隊から離隔した方がいいのではないか、と。

 たっぷり三分。俺の説明を目を閉じて聞いていた爺様は、組んでいた腕を解
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