第84話 死地へと送り込む
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宇宙歴七九〇年 二月 エル=ファシル星域エル=ファシル星系より
後続の船団も順調にエル=ファシル星系に到着し、第四四高速機動集団の陣容は整った。
エルヴェスダム氏より依頼のあった自航式ジャマーの手配は、カステル中佐から機動集団各艦に向けて『三発ずつ』供出するよう指示が出された。護衛任務が終了した第四四高速機動集団は『一時的なエル=ファシル星域防衛と帰還に伴いその周辺星系での海賊掃討』任務に携わると公表されているので、それを外部に偽装する為のジャマーというわけだが、エルヴェスダム氏から送られてきた作戦書について、機動集団で最もエル=ファシル星系に詳しい二人の艦長は内容を聞いて唸り声を上げた。
自航式ジャマーには当然ワープ機能はないし、小型の宇宙機雷を改造したものだから航続力に乏しい。それで半年も誤魔化せると言っているのだから、どんな計画かと思ったら重力と太陽風とエネルギー流を利用するというモノだった。各部隊が移動しながら放出することで運動エネルギー自体は与えられるが、そのままでは明後日の方向に飛んで行ってしまう。星系内に散らばることなく留まりつつ、最低限の燃料消費で星系を周回するという離れ業だ。流石はエルヴェスダム氏と思ったのだが……
「これは麻薬密輸組織がよくやる『潮目流し』です。星系外部から侵入し、エル=ファシルXに隠れた密輸業者の船は、禁止薬物などの商品を制御機能付きのコンテナに詰め込み、このルートで放出します」
ユタン少佐は右手を目に当てながら、首を振って呆れている。
「コンテナは発見しにくく、レーダー透過装置まで搭載している奴もありますので、これらを捕まえるには不自然な動きをする回収側の船の動きを把握する必要があります」
コンテナの重量とジャマーの重量の違いを計算すれば、あとは以前の取り締まり記録や自身が見た回収船の動きを加算することで、『航路』を弾きだすことができる。まさに地勢に詳しい管制官らしい作戦だが、密輸組織の追跡調査も行ってきた元エル=ファシル防衛艦隊の面々から見れば、よくもまぁ古傷を抉るような話を、といったところだろう。
二月四日一二〇〇時。これ見よがしに管制センター周辺で燃料補給を行った第四四高速機動集団は、海賊掃討作戦の為に、星系外縁部へ向けて出動。星系内最大戦速をもって第五惑星軌道上へ向けて進出。
同日二三〇〇時、エル=ファシルXの惑星軌道上にて、各艦が自航式ジャマーを放出。放出後はエル=ファシルXの影に隠れるように部隊毎の単縦陣を形成し、一路星系外縁部の彗星雲へ進む。
五日〇六〇〇時、二度の進路変更の後に偵察衛星が配備されていない跳躍宙点に到着。既に進発待機していた第九戦略輸送艦隊臨時A四二五五輸送隊と合流。同隊の巨大輸送艦三二隻をハンバーガーのように挟み
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