第83話 サインとサイン
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せが来るが、それを笑っていなしている。
ジャムシード星域カッファ星系で二四時間、エルゴン星域シャンプール星系で二四時間。民間船側の応急修理と補給と休養の後、帰還船団は一隻もかけることなく一月二七日。エル=ファシル星域エル=ファシル星系へと到着を果たした。ヤン=ウェンリーと共にこの星系を脱出してから一八箇月。三分の一以下とはいえ、エル=ファシル住民の一年半に及ぶ避難生活は終わりを告げた。
「またここに来るとは、二箇月前まで思いもしなかったぜ」
エル=ファシル宇宙港航法管制センターで、軍側との引継ぎを前日に控えたエルヴェスタム『管制士長』が、艦隊側からの立ち合いとして同席した俺を、センターの下層展望室に誘った。
三〇〇万人の住民がいた頃、この展望室は眼下に惑星エル=ファシルを展望できるスポットとして、それなりに賑わっていたという。特に日曜・祝祭日となれば若い家族連れやカップルで溢れていて、彼ら相手に商売するレストランや売店も多くあったそうだ。勿論最低限の要員しかいない現在は店も開いていないし、人影すらない。
そんな場所に俺を連れてきたということは、誰にも聞かれたくない何か言いたいことがあるんだろうと思って視線で話を促すと、エルヴェスダム氏は頭を掻きながら言った。
「軍事作戦を進めているんだろ? 帰還船団を隠れ蓑にして」
「ええ、まぁそうです」
「第四四高速機動集団だけじゃねぇ、もっと大規模な兵力を動員する軍事作戦だ。イゼルローン要塞攻略は去年失敗に終わっているから、そこまで行くわけじゃねぇだろうが」
「そうですね」
「脅迫されている俺の仕事は、第四四高速機動集団の艦艇データを宇宙港航法管制センター内で一時的に星系内にいるように偽装することと……ほかに何をすればいいんだ?」
「三〇隻ほど停泊しつつも積み荷を降ろさないまま離脱する巨大輸送艦を見逃してもらうこと、ですね」
不正と言えば不正だ。軍がこのまま航法管制センターを管理しておけば、『適当に』処理できる話だが、軍属から航路局に戻ることになるエルヴェスダム氏がやれば犯罪になる。勿論作戦終了次第、内容は公表されず『不起訴処分』にはなるだろうが、露見すれば一時的とはいえ氏が汚名を被ることになる。
「なんだ、その程度か。そっちが自航式のジャマーとその管制権を俺に用意してくれれば、大したことじゃない。俺が統制官であるうちなら、まず半年は誤魔化せる……それほど長期的な作戦か?」
「いえ、四月中旬には勝敗がついているでしょう」
それを意外に早いと思ったのか、エルヴェスダム氏は三白眼を丸くして俺を見つめる。一応今の彼の身分は軍属で、機密保持という点からはあまり好ましくはないが、民生部門の通信手段が限られている現状で彼が露骨に作戦情報を帝国軍に漏らすことはも
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