第83話 サインとサイン
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いく。上級幹部への近道である戦略研究科を第一志望にする人間が多い故に席次は早々に埋まっていき、第二志望である戦術研究科など別の学科に流れていくことになる。そして席次が上から埋まっていって三つの志願学科のいずれにも入れない場合は、士官学校教育部が志願者の傾向を見て割り振りすることになる。
正直に彼女の学力は一〇年前の俺と大差がない様にも思えるから、戦略研究科にもかろうじて合格できるのではないかとは思うのだが、確実とは到底言えない。仮に戦略研究科に合格したとしても、彼女が一体何者になりたいのか、俺には全く想像できない。
その上で第二志望が陸戦技術科だった場合、筆記試験とは別に基礎体力試験が課される。ジャワフ少佐やディディエ中将に鍛えられているのでこれも問題ない、と思いたいが体力自慢の同期ですら、『完全実力主義』という壁にぶち当たって相当に消耗して、俺にこっそり泣き言を漏らしたくらいだ。少佐や中将に義理立てしたということかもしれないが、義理立てで将来を決めているなら何が何でも阻止しないといけない。
結局、女性軍人としては無難なカリキュラムの情報分析科が、嬢にとっては一番しっくりくる学科だと思うが、一学年上に同い年のアントニナとフレデリカ=グリーンヒルがいるというのが最大の難点だ……
「後方支援科や法務研究科は選択肢になかったのか?」
「ないわけではありませんでしたが、三つしか志願できない以上、選択肢は限られます」
「……圧力があるなら正直に言えよ?」
「ディディエ中将閣下はお優しい方です」
別にディディエ中将からと言ったわけではないのだが、本当のところ圧力があったのかなかったのか、ブライトウェル嬢の答えではわからない。ただフィンク中佐達のような軍艦乗りになりたいというわけではない、ということしか俺の乏しい頭では分からないのだが……
◆
エル=ファシル星系迄の帰還船団の航海は順調そのもの。航行速度が不揃いな貨客船と軍艦の集合体とはいえ、軍事航路を優先的に航行している上に、恒星フレアや流星群といった障害については事前に調査済みであるし、幸いにも突発的な天災・人災にも遭遇していない。航法コンピューターの抜き打ち検査を行っても問題はなく、航路管制センターからも「良き航海を祈る」としか言ってこない。人災の最たる宇宙海賊も、八〇〇隻の軍艦が護衛する船団に喧嘩を売ってくるほど命知らずではない。
FASの訓練も順調だ。敢えて燃料を半員数にして出動し、エル=ファシル星系に到着するまで各艦が都合三度訓練を実施した。ミスがあっても全て取り返しがつくものであって、カステル中佐も珍しく上機嫌。時折船団側から、高速集団内で頻繁に行われるFAS訓練に対して「軍艦側の補給系統に何か問題があるのではないか?」と懸念と問い合わ
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