人魚姫の夢
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「少しでも変な動きをしたら、撃つわ」
「おお、怖い怖い」
にやりと笑みを浮かべるさやか。
すると、彼女の顔に変化が現れる。
彼女の顔に、うっすらと浮かび上がる紋様。吹奏楽器のベル部分が並んでいるようなデザインの顔が重なる。
「さやかちゃん……!」
夢ではなかった。夢であってほしかった。
まどかが軟体生物を思わせる怪物に襲われた時、さやかが見せたその姿。あの人魚を思わせる異形へ、さやかが変身したのだ。
それは。
「ファントムに……どうして、さやかちゃんが……?」
「また? どうしてってそりゃ当然、絶望したからだけど?」
あまりにもけろっと答えるさやかに、まどかは一瞬言葉を失う。
親友と絶望。二つの、全く遠いワードを結び付ける要素。
まどかがその答えを連想させるのに、時間はかからなかった。
「上条君……?」
「上条恭介が亡くなったのは去年の十一月よね……? 五か月前からファントムに?」
「そもそも……あたしがこうなったのも、恭介が死んだのも、アンタ達参加者のせいでしょ?」
その声は、本当にさやかのものだったのか。
彼女の手に、青い雫が発生する。それは、一粒が無数となり、縦長の水柱となる。一度さやかがその水滴を振り切ると、それは鋭く長いレイピアとなる。
「「っ!」」
さやかの体から敵意。それは、まどかさえも感じられた。
さやかを左右にはさむほむらとリゲルは、それぞれ飛び退く。
まどかを抱きかかえたほむらの跳躍。それぞれ着地すると同時に、さやかの体が発生した渦に包まれていく。
「ひっどいもんだよ、ファントムの体って」
渦が消え、現れたファントム、マーメイド。
先述した金管楽器が並んだような頭部。青いマント。そして名前の通り、人魚のような足。細く綺麗な腕は、動くたびにしなり、流れる水を連想させる。
マーメイドは指揮棒のようなレイピアを持ち上げながら続ける。
「味覚も嗅覚もないし、視界の色も若干薄く見える。特に鮮やかになるのは、誰かが絶望を感じた時だけ。普通に生きているだけでも、気が狂いそうになるよ?」
「っ!」
リゲルが発砲。
彼女の砲台から放たれたのは、銃弾ではなく青い光線。
それに対して、マーメイドはレイピアを振る。その剣先に水が迸り、正面からリゲルの光線を打ち弾いた。
マーメイドはそのまま静かに着地。だが、地面につま先が触れた途端、彼女の体は変化する。
固体から、液体へ。
床に潜った。
「何……!?」
驚くほむら。
徐々に廊下の中に沁み込んでいくマーメイドは、その最中であっても言葉を止めない。
「アンタ達の身勝手な戦いのせいで、あたしはこんな化け物
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