人魚姫の夢
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どこか遠くで、爆発が聞こえた気がした。
鹿目まどかは、一瞬だけ意識を別のところへと持って行っていた。
見滝原中学の最終学年、三年生としての幕あけを昨日終え、今日、ようやく捕まえた。
「さやかちゃん!」
まどかの呼びかけに、親友である美樹さやかは足を止めた。
「おおっ! まどか!」
ようやく話しかける機会がもてた。
青いボブカットがトレードマークの少女、美樹さやか。彼女はまどかの声に、笑顔で答えた。
「何々? どうしたの?」
あくまで、今までと変わらない笑顔。
だが、それを見るまどかは、言葉一つ一つを考えながら口を動かしていた。
「さやかちゃん……その……」
「いやあ、春休み終わっちゃったねえ。今日の授業もなかなか大変だったし……ねえ、気分転換にどっか遊びに行かない?」
だが、それ以上のまどかの言葉を、さやかが防いだ。
頷く以外の行動をとれなかったまどかは、そのまま彼女に付いて行こうとするが。
「待ちなさい。美樹さやか」
その呼びかけに、彼女は足を止めた。
その声の主は、まどかにももう分かる。まどかの肩を掴み、そのまま脇に押しのける彼女は。
「ほむらちゃん……」
その、黒く長い髪が真っ先に目を引く彼女の名は、暁美ほむら。
常日頃、いつもまどかの近くにいる印象を持つ彼女。クールビューティという言葉が似合う彼女だが、その手にしているのは、中学校には似合わない拳銃。
「おお、転校生! ……いや、もう転校生っていうのもおかしいか。もう半年も経ってるんだもんね」
銃口を向けられているのに、平然としているさやか。銃口と笑顔のギャップに、まどかは頭が痛くなった。
「美樹さやか。貴女に聞きたいことがある」
冷淡に、声のトーンを落としたまま、ほむらはさやかを睨む。
「貴女は……ファントムなの?」
「……ほむらちゃん……!」
それは、まどかも気になっていた問いだった。
ファントム。
それは、ゲートと呼ばれる魔力を秘めた人間の絶望を食らい、生まれ出でる怪人。
まどかもこれまで幾度となく襲われ、知り合いの指輪の魔法使いに助けてもらったことがある。
そして、つい先日。春休みのある日、さやかがまどかの目の前で、そんなファントムに変貌したのだ。
だが、さやかは顔をピクリとも動かさず、ほむらを見つめている。
「それ、あたしが口で言わないといけないの?」
表情は笑顔のまま。だが、彼女がほむらを見つめる眼差しは、間違いなく冷たいものとなっていた。
「前も言ったでしょ? 美樹さやかの人格も、記憶も、全部持ってる。あたし自身、美樹さやかのつもりだって。それにほら、人を絶望させてファントムを増やそうなんて
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