第82話 参謀の美しくないおしごと
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「ですが、大佐にはご家族があおりですし……ところで出征に関してはシトレ中将閣下が?」
「今、私が務めているところが総参謀長直轄だからね。嫌でも作戦原案が回ってくるし、そのチェックに最近忙しくてね……」
そういうフィッシャー大佐はらしくもないわざとらしい咳を二つしたあとで、軍用鞄から大きめの画面端末を取り出す。
「……え、もしかして」
嫌な予感が俺の背中をウゾウゾとはいずり回る。
「モンシャルマン准将閣下は戦艦の副長・攻撃指揮官を長く経験された人で、冷静かつ的確な砲撃指示においては右に出る者はいないと評判だった方だ。ビュコック少将閣下は誰もが認める歴戦の指揮官。モンティージャ中佐に関しては知己がないので存じ上げないが、それなりの情報将校なのだと思う」
画面端末が起動し、なかなかお値段が高いと噂のある三次元投影アタッチメントが小さなうなり声を上げて、画面上に星系航路図を映しだす。もう一箇月以上見慣れた図面だ。そしてそこには赤い三角形が二つ……
「つまり今回の第四四高速機動集団の航法・行動計画の根幹を設計した人物の『元教師』としては、『元生徒』が七五点で満足するような次元にいては些か腹に据えかねるのでね」
トントンとタッチペンで机を叩くフィッシャー大佐の目は、キベロン演習宙域で見せた冷静な査閲官そのもの。艦隊機動戦原理主義過激派の俺としては、年越し新春早々師直々の添削というご褒美のような懲罰のような長い夜に、喜んでいいのか悲しんでいいのか分からなかった。
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