第82話 参謀の美しくないおしごと
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を動かすのと同じくらいに人を動かすのも慣れたもので、たちまち特殊法人内でも一角を占める立場に立った。
が、それが度を過ぎたのか、『本物の』エル=ファシル住民であるシェストフ氏ら特殊法人幹部に疎まれ、しかも何故か航路保安局にも圧力がかかり、仕事を止めるか支援活動を止めるかという選択肢を迫られ、結局離職。そして無職になった彼にジュリーは別れを告げ、心が折れた彼は支援活動にも別れを告げた。
愚痴るモンテイユ氏から彼の存在を知り、類まれな偶然に感謝しつつもこれを利用しようとする俺は、さしずめ神様に感謝する小悪魔というところなのだろう。そういうわけでヤンに小道具を用意させてもらったわけで……
「エルヴェスタムさん。もう一度、エル=ファシルの為に力を貸してくれませんか?」
俺は真正面から彼にそう告げた。さらに細くなった三白眼が、俺を射すくめる。
「……軍の仕事はごめんだぜ。部下は殴るものだと思っている連中の下でなんか働けねぇよ」
「いいえ。特殊法人でです」
「それこそ問題外だ。俺がエル=ファシル人じゃないってだけで、排除しにかかる連中の為にどうして働く必要がある」
「現在、エル=ファシル航宙管制区は軍が統括しております。現時点では惑星自体が軍事基地のようなものですからそれは仕方ないんですが、来年の一月中旬から末にかけて軍民協力してエル=ファシルへの帰還事業が開始されます」
「思ったより早えな。連中のことだからあと一年位うだうだしているかと思っていた。で、もう一度エル=ファシルのオペレーター席に座れと?」
「ええ。最初は軍嘱託職員……少佐待遇の軍属、という身分になりますが、『統括管制官席』にお座りいただきたいと」
軍の管制官が無能だから交代してほしいというわけではない。軍から民への移行をスムーズにさせる上で、早めに民間人に乗り込んで欲しいという点と、三〇隻ほどの巨大輸送艦を含めた艦隊の動きを『誤魔化す』ことの出来る有能な協力者が必要な点だ。実のところ個人的にはもっと悪辣なことを彼には頼みたいのだが、いまはそれで十分。
「前の統括はどうするんだよ。あいつもハイネセン出身だが、軍が航路保安局に圧力かけて辞めさせるのか?」
「一年前に航路保安局エル=ファシル宇宙港管制センターは解散されてますからね。新編成される時に『事前知識の豊富さ』と『軍の強い推薦』は実に有効に働くんです」
「断っても問題はねぇよな?」
「ありません。取りあえずはエル=ファシルへの帰還事業終了までの期間、軍属としての雇用という形ですが、ご希望されるなら航路保全局の別任地への復職も、軍への転職も、いずれに対しても『軍が』口利きいたします」
正確には軍ではなく第四四高速機動集団司令部が、ではあるがそのあたりは何とでもなる。彼にとってはそれほどリスク
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