第四章
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「安心しろ」
「明日には元に戻っていましたね」
三人の母の百合子も言ってきた、こちらは美樹がそのまま歳を取った様な和服姿の妙齢の美女である。
「心配無用です」
「それはそうですが」
「何分お歳ですから」
「これは」
「お父様、ホークスの十九番は誰ですか?」
心配する我が子達を目にしてだ、一人は父に問いかけた。
「一体」
「決まっておる、野村克也さんじゃ」
興正は瞬時にきりっとした顔に戻って答えた。
「三冠王、四番キャッチャー監督兼任」
「そうでしたね」
「囁き戦術も有名じゃな」
「あっ、戻った」
「明日どころか一瞬で」
「嘘みたいだ」
「いかん、我を失っておった」
祖父は普段の顔で言った。
「この程度でな、来年じゃ」
「そうですか、来年ですか」
「来年がありますか」
「だからもうですか」
「シーズンオフ特にキャンプもチェックせねばな」
もう日本ハムの胴上げから目を離して言っていた。
「この程度で落ち込めるものか、こうしたことは何度もあった」
「何度もですか」
「そうじゃ、別所を強奪された時なぞじゃ」
忌まわしきこの世の邪悪の象徴巨人にそうされた、そして巨人は彼をエースとしておぞましい黄金時代とやらを築いた。
このことをだ、彼は伊三美に言うのだった。
「三年連続でシリーズで負け昭和三十年は最悪だった」
「そうだったんですか」
「シリーズ一敗の後三連勝してな」
「あと一勝ですね」
「そこから三連敗した、あの時を思えば」
それこそというのだ。
「何でもない、あの時も来年じゃと思った」
「そうだったんですね」
「その後西鉄に負け続けたがな」
西鉄の三連覇となったのだ、そして巨人は征伐されたのだ。
「それから昭和三十四年のじゃ」
「杉浦さんですね」
忠が言ってきた。
「私の名前の元の」
「あの人の力投でじゃ」
「リーグ優勝と日本一に輝きましたね」
「四連投四連勝でな」
今も語り継がれる活躍である。
「負ける時もあれば勝つ時もある」
「だからですね」
「来年じゃ、ではそちらを見ていくぞ」
こう言ってだった。
祖父は完全に立ち直った、つい先程の呆けた姿は何処にもなかった。
祖父はそれからもホークスを応援し続けた、そして二〇二三年。
しっかりとした背筋と足取りでだ、自分の妻に言った。
「開幕戦に行くぞ」
「はい、それでは」
妻もにこにことして応えた。
「行きましょう」
「留守は頼んだぞ」
「ひいお祖父様ひいお祖母様行ってらっしゃい」
忠達三人はもう結婚していた、それでだ。
曽祖父母である彼等を贈った、だが孫達は。
そんな二人特に興正を見て話した。
「応援しているからな」
「今もお元気ですね」
「
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