第三章
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その心配は当たり興正はこんなことを言い出した。
「何じゃあのバケモノは！」
「バケモノって誰ですか！？」
「大谷翔平さんですか？」
「あの人ですか？」
「そうじゃ、ダルビッシュマー君がメジャーに行ったかと思えば」
ホークスの強敵達がというのだ。
「遥かに凄いバケモノが出て来るとは何事じゃ！」
「お祖父様落ち着いて下さい！」
「大谷さんはバケモノじゃないですから！」
「れっきとした人間ですよ！」
「能力がバケモノじゃ！」
祖父は自分を必死に宥めようとする孫達に叫んだ、口を開いてそうするが見れば歯は一本も欠けていない。
「あの背丈と等身もじゃ！」
「その二つ関係ないですよね」
「確かにあの人大きいですけれど」
「等身も何か凄いですが」
「戦前の野球ではないのじゃぞ」
祖父は今度はこんなことを言い出した。
「投打二刀流とは何じゃ、投げてもあの有様じゃ」
「ホークス負けましたね」
「全く打てないで」
「我が強力打線が手も足も出ん」
自慢の打線も勝てないというのだ。
「戦前から野球を観ておるわしですらじゃ」
「あんな人は見たことがない」
「そう言うんですね」
「恐ろしい敵だって」
「何であんなバケモノが出て来るんじゃ」
興正はこうも言った。
「遂に逆転される、稲尾和久以上の敵じゃ」
「稲尾って誰ですか？」
伊三美はその名を知らず言ってしまった。
「一体」
「アホか！西鉄のエースじゃ！」
祖父からすぐに怒りの言葉が来た。
「今の西武のな！神様仏様じゃ！」
「その頃の人ですか」
「そうじゃ！稲尾にも驚いたが」
その頃の話もするのだった。
「稲尾以上の怪物じゃ、中西豊田大下をも凌駕する」
「全部西鉄の人ですか」
「そうじゃ、今の監督の工藤さんや前の監督の秋山さんの最盛期もものともせん」
今度は自分が愛するチームの監督達の話をした。
「最強のバケモノじゃ、どうすればいいんじゃ」
「あれっ、秋山工藤ってな」
「そうですよね」
忠と美樹はその名を聞いて顔を見合わせて話した。
「西武の黄金時代の」
「主力選手達だったよな」
「そうでも後でホークスに来て活躍した」
だからとだ、祖父は反論した。
「ならばホークスの選手、しかしその人達すらじゃ」
「大谷さんは凌駕する」
「そこまでの人ですか」
「だから言うのじゃ、あのバケモノを何とかせよ！」
祖父は絶叫した。
「さもなくばホークスに三連覇はない！」
「そう言いましても」
「あんな人そうそう無理ですよ」
「僕達も驚いていますから」
「誰かおらんのか！」
大谷翔平を打てるバッターはとだ、興正は日本ハムに首位を奪われてから絶叫した。孫達が必死に宥めてもだ。
彼は絶叫し続けた、そして。
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