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老いてもアイドル好き
第二章

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「今日も楽しんできたのね」
「そうしてきたぞ」
「それは何よりね」
「ああ、また言ってくるぞ」 
「そうしてきてね」
 佳織は義龍に笑って話した、そんな二人を見て家族は思った。
「浮気じゃないの?」
「自分以外の人に熱上げてるから」
「それでいいのかな」
「ひい祖母ちゃんとしては」
「何言ってるのよ、応援してるだけよ」
 佳織はいぶかしむ家族に笑って話した。
「それならね」
「浮気じゃないんだ」
「そうなの」
「義龍さん五十年私と一緒にいてね」 
 この前金婚式を挙げたばかりだ。
「アイドルの応援は趣味でね」
「浮気はしてないんだ」
「そうなの」
「一度もね、誰かに声をかけることもないし」
 自分以外の女性にはというのだ。
「かけられたことはあったらしいけれど」
「断わっていたんだ」
「いつも」
「アイドルはあくまで応援で」
 その対象でというのだ。
「野球のチームと同じよ」
「そういえば一家全員で阪神ファンだし」
「ひいお祖父ちゃんもだから」
「そうよ、アイドルの応援はいいのよ」
 これはというのだ。
「別にね。むしろアイドルを応援しない義龍さんなんてね」
「ひいお祖父ちゃんじゃない」
「そうなのね」
「それにあの人が応援する人ってね」
 ここでだ、佳織は。 
 一家に自分が若い頃の写真を見せた、すると一家ははっとした。
「ひい祖父ちゃんが推す娘って」
「ひいお祖母ちゃんの若い頃に似てる娘ばかり?」
「それじゃあ」
「ひいお祖父ちゃんは」
「私が若かったらアイドルになれたとか言うし」
 家族に頬を赤らめさせて話した。
「それなら駄目って言えないでしょ」
「そうだな、確かに」
「これだとね」
「だから義龍さんにはこれからも続けて欲しいのよ」
 こう言うのだった、そして佳織は義龍のアイドル達への応援を咎めるどころかむしろ暖かい目で見続けた、それはずっと続き。
「さあ、今日は握手会だ」
「行ってらっしゃい」 
 佳織はダイアモンド婚式を終えた夫がそちらに行くのを笑顔で見送った、今では家族もそんな彼そして佳織を優しい目で見ていた。二人はこうであってこそと思いつつ。


老いてもアイドル好き   完


                2023・1・21
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