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機動6課副部隊長の憂鬱な日々
第64話:公開意見陳述会前夜
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さん」

俺がステラさんの背中に向かって声をかけると,ステラさんは背中を向けたまま
立ち止まった。

「ありがとうございます。これで,いくらか隊舎での戦闘が
 楽になるかもしれません」

俺が深く頭を下げてそういうと,ステラさんは俺の方を一瞥すると
また歩きはじめた。

「気にしなくていい」

ステラさんの言葉に俺が顔を上げると,ステラさんの姿は無かった。



夜になり,俺は屋上で夜空を眺めていた。
機動6課に来て半年,いよいよこの時が来たかと思う気持ちが
俺の神経を高ぶらせていた。

「ゲオルグさん。やっぱりここでしたね」

声のする方をみると,シンクレアが近づいてきた。

「なんでわかった・・・って前にここで飲んだな」

俺がそう言うと,シンクレアは苦笑していた。

「それもありますけど,ゲオルグさんっていつもでかい作戦の前は
 決まって外に風にあたりに出たり,星を眺めたりしてたでしょ。
 だから,今夜もここに居るんじゃないかと思ったんですよ」

「お見通しか・・・」

「ま,付合い長いですから」

俺はシンクレアの言葉を聞きながら,手すりにもたれかかった。

「いよいよ決戦だと思う気持ちと,何もなければいいのにと思う気持ちの
 両方が入り混じっててね。なんだか複雑な気分だよ」

「俺も同じですよ。ここの人たちとは関係ない,って割り切るには
 少々長く居すぎましたからね」

「そうか」

俺がそう言った後,しばらく静寂が屋上を包んだ。
夜風が少し強くなって来た時,シンクレアが再び口を開いた。

「ゲオルグさんは本当は地上本部に居たいんじゃないですか?」

「何でそう思う」

「なのはさんと一緒に居たいんじゃないですか?」

シンクレアの言葉に俺は小さく笑った。

「何がおかしいんです?」

シンクレアはそんな俺の様子を訝しげに見ていた。

「あいつはそんなにヤワなタマじゃないよ。俺なんかよりよっぽど強いしな。
 魔導師としても,人間としても」
 
「そうですかね。でもなのはさんも一人の女性ですよ」

「そんなことは俺が一番よく判ってるよ。だから俺が残るんだよ」

「ヴィヴィオ・・・ですか」

シンクレアの問いかけに俺は小さく頷いた。

「あいつは里親を探すって言い張ってるけど,冷静にあの懐きようを見たら
 ヴィヴィオが今更他の人間を母親と認識できる訳がない。
 それはなのはだって判ってるはずなんだけどな」

「それはゲオルグさんも同じですよ。今更他の人を父親と認識できるとは
 思えませんね」

「判ってるよ,んなこと。でもな・・・」

「まだ過去の自分にそんなにとらわれてるんですか?」


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