第一章
[2]次話
阪神に宝くじ
黒田彩菜は阪神ファンだ、仕事が終わって何もないとシーズン中は常に大阪の職場から甲子園球場に行く程の阪神愛の持ち主だ。
そんな彼女がある日職場でこんなことを言った、黒髪を長く伸ばしていて細長い顎の先が尖った顔で切れ長の漢字の大きな二重の目と小さな唇を持っている。背は一六三程でスタイルはいい。職場では出来る社員として評判で性格もあっさりしている。
だが阪神についてはだ、こう言うのだった。
「何でいつも打たないのよ」
「そう言われてもね」
「阪神の貧打って伝統でしょ」
「昨日も一対立〇で負けたけれど」
「貧打は運命でしょ」
「運命じゃないわよ、バース様がおられた頃はね」
彩菜は自分が生まれる前の助っ人の名前を出した。
「もうそれこそね」
「いや、昭和のお話されても」
「というかバースさんいた頃は確かに打ったけれど」
「その時だけでしょ」
「あの金本さんがおられた頃だけで」
「何でずっと打たないのよ」
同僚達にカリカリした顔で述べた。
「助っ人に来てもらっても」
「ピッチャー活躍するわね」
「どの助っ人も」
「けれどバッターはね」
「バース二世とか言って」
「それでスラッガーが入団したと思ったら」
ドラフトやトレードでというのだ。
「最初は打ってもよ」
「夏になるとね」
「いつも打たなくなるのよね」
「特に地獄のロード以降」
「秋もね」
「何、こういうこと？」
彩菜は自問自答する様に言った。
「阪神にとってスラッガーは宝くじ？」
「ああ、打つ人は」
「例えばヤクルトの村上さんみたいな」
「いや、バースさんみたいな人は」
「そうだっていうの？ここまで打たないと」
両手を指をまげて広げて胸の高さで上に向けて言った。
「阪神にとっては」
「もうその域よね」
「本当にたまにそうした人が来てくれて」
「それで打つ感じ？」
「阪神ってね」
「こうなったらね」
彩菜は目を燃え上がらせて言った。
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