第2部
ダーマ
シーラの意志
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くる頃、お祖父様は賢者となっていたんだ」
「……じゃあ、悟りの書がなくても、お祖父様は賢者になったってこと?」
だが、マーリンはシーラの質問を無視して言葉を続けた。
「結局それ以降、ガルナの塔を攻略できる僧侶は誰一人いなかった。父様ですら、為し得なかったことだ。それをまさか、姉上が実現させるなんて、今でも信じられないよ」
「てことは、攻略できないとわかってて、シーラにガルナの塔のことを教えたんだな?」
剣呑な目でマーリンを睨み付けるナギ。彼がこんなに怒っているのを見るのは初めてだった。
「それほどまでに頑張ったんだから、姉上の転職を認めてみてはどうですか? 父上」
ナギの言葉でさえ気にも留めないマーリンは、シーラのお父さんに視線を向けた。シーラのお父さん……いや大僧正は、肩をぶるぶると震わせながら、シーラの方を虚ろな目で睨み付けている。
「……私でさえできなかったことを、お前が成し遂げただと? ふざけるな!! お前のような出来損ないが、偉大なる父上と同列な訳がないだろうが!!」
耳が痛くなるほどの激昂が、神殿に響き渡る。
「遊び人風情が、そんなことできるわけない!! 本当は塔になど行ってないだろう!! この、嘘つきが!!」
大僧正はシーラにそう言い放つと、つかつかと彼女に歩み寄り、取り押さえている僧侶たちを押し退け、彼女の胸ぐらを掴んだ。
「一族の面汚しには、職を変える資格などない。お前は一生遊び人として、恥と後悔にまみれながら生きていくしか道はないんだ!!」
「……父様……」
実の父親に罵倒され、シーラの目にぽろぽろと涙が溢れてはこぼれ落ちていく。
もはや我慢の限界だ。仲間が泣いているのを見て、これ以上黙っていられるほど、私は薄情な人間ではない。彼女を助けようと、私は一歩踏み出した。
だが、私より先に彼女のもとへと歩き出す人物がいた。その人物はシーラではなく、その隣の大僧正の目の前で立ち止まると、左手で拳を握りしめ、腕を大きく振りかぶった。
「いい加減にしろ!!」
ドゴッ!!
その瞬間、大僧正は衝撃音とともに壁際へと吹っ飛ばされた。
「ぐはあっ!!」
ドサッ、と床に倒れた大僧正の右頬には、殴られた跡がくっきりと残っている。
「お前らの不愉快な茶番にはもう飽きた」
怒気のこもった低い声で、彼は言った。そして、周囲を見回し、うんざりした様子でため息をつく。
「もういいだろ、ザルウサギ。帰るぞ」
「ユウリちゃん……?」
大僧正を殴った張本人であるユウリは、利き手をさすりながらシーラにそう言うと、彼女の手を取った。
「な……、何だ、お前は……?」
何が起こったのかわからず、殴られた頬を押さえながら大僧正が尋ねる。そんな彼の姿を映すユウリの目には、炎が猛々しく燃え盛っているように見え
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